内容説明
米中二極構造をめぐるイディエーショナルな次元の実像。冷戦後、アメリカをはじめとした西側諸国が流布・構築してきたリベラルな国際秩序という理想郷に陰りが見え、非リベラルで権威主義的な風潮が国際的に高まっている。米中二極構造を中心とし、軍事力や経済力にとどまらないイディエーショナルな次元―イデオロギー、価値、規範―をめぐる理論と現象を緻密に検証した本書は、今日の国際情勢に「言説」という新たな分析視座を提供する。本書執筆中の2023年7月に急逝した著者の後の校正作業を三浦聡教授(名古屋大学)が継ぎ、遂に完成へと導いたまさに渾身の集大成。国際政治学の泰斗の遺稿!!
目次
本書の問題意識と構成
イディエーショナルな力
言説、言説力の素描と本書での分析枠組み
一方的投射、規範の対抗、双方向の投射、「対等」の言説
戦略的ナラティブ
言説(ナラティブ、話語)とその投射―一般モデルをもとめて
中国の話語権
中国の逆投射、アメリカの反応、相互反応のエスカレーション
規範の対抗から秩序の対抗へ―規範の対抗理論の現在
戦略的コミュニケーション
理論統合への試論―言説の投射と規範の対抗
イデオロギーの対立―「民主主義と専制」と中国の民主主義:バイデン政権
物質的世界との往復―イデオロギーの正当性の淵源、イデオロギーの距離と大国間の戦略的関係
中国の人権言説の展開(国連人権理事会を中心として)、1989~2022―言説の国際政治学の一つのケース・スタディ
いまなぜ言説(ナラティブ)か?
著者等紹介
山本吉宣[ヤマモトヨシノブ]
1943年神奈川県生まれ。1966年東京大学教養学部(国際関係論)卒業。1968~74年フルブライト留学生として米国ミシガン大学政治学部大学院留学(Ph.D.取得)。埼玉大学教養学部教授、東京大学教養学部教授、青山学院大学国際政治経済学部教授を経て、PHP総研研究顧問・東京大学名誉教授。2023年7月7日逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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