内容説明
福祉政策には、担い手が受け手を管理・統制するという点において、権力構造が内在化されている。わが国において、その権力構造は卑劣ですらあった。昭和初期、内務省官僚による国民の労働・生活の統制という権力構造を明らかにした先駆的研究が、本書所収「内務省の歴史社会学」である。ここに、日本型福祉国家の源流をみる。そして戦後から今日にかけて、人口・社会構造の変容に伴い福祉の受け手―高齢者、障害者、社会的弱者など―が多様化すると同時に、その担い手も官民問わず拡大してきた。しかし、今なお、担い手と受け手の間に潜む権力構造は強根い。そして多様化した受け手たちもまた、福祉をめぐるさまざまな葛藤の中で日々の生活を営んでいる―。未公刊論文も収録した「福祉社会学」の総合的著作集。
目次
1 内務省の歴史社会学(内務省の歴史社会学;工場法と内務省;内務省の映画検閲)
2 福祉社会学の方法(社会変動と社会保障;対談 福祉と関連サービス―福田垂穂・副田義也;福祉社会学の方法)
3 福祉社会学宣言(ケースワーカーの生態;だれのための老人福祉か;老人福祉は利用者の家族をどう扱っているか;なぜ住民運動は老人福祉を阻害したのか;障害児殺しと減刑反対運動;福祉社会学の課題と方法)
4 震災の体験と物語(震災の体験と物語;死別体験の博物誌;あしなが育英会は日本社会の貴重な財産;東日本大震災・津波遺児家庭調査;死がひそむ日常生活)