内容説明
帝国からの脱却、国民国家の模索、そしてナショナルな枠組みを超えた地平へ―。イングリッシュか、ブリティッシュか、ヨーロピアンか。アイデンティティが重層的に折り重なるイングランドでは、1980年代以降、シティズンシップ教育をめぐって誰が「市民」あるいは「国民」であるのか、「市民」であるとはどういうことかが問われてきた。3度に渡るカリキュラム改革の詳細な分析を通して、「シティズンシップ」の意味内容がいかに変化してきたのか、その歴史的変遷を捉える。イングランドにおけるシティズンシップ教育政策が国民意識の形成に担った役割を明らかにし、今日におけるオルタナティブなシティズンシップの実体を描き出した。
目次
第1章 帝国に由来するシティズンシップの特質(地位としてのシティズンシップ;権利としてのシティズンシップ ほか)
第2章 シティズンシップをめぐる共通認識の欠如―第1期カリキュラム改革(1988年教育改革法成立以前のシティズンシップ教育;共通カリキュラムの導入とナショナルアイデンティティの形成 ほか)
第3章 シティズンシップの明確化と人権との差異化―第2期カリキュラム改革(権利の明確化と国籍との関連の模索;シティズンシップ教育の必修化をめぐる審議経過にみる論点 ほか)
第4章 連合王国における共生に向けたシティズンシップ―第3期カリキュラム改革(アイデンティティの基盤としての国籍;地下鉄・バス同時爆破事件とカリキュラム見直しの要請 ほか)
著者等紹介
菊地かおり[キクチカオリ]
1982年、滋賀県生まれ。筑波大学人間系助教。博士(教育学)。筑波大学大学院人間総合科学研究科教育基礎学専攻単位取得退学。筑波大学人間系特任研究員を経て、2015年9月より現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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