内容説明
文理融合を実践してきた東工大桑子研究室の挑戦的知の論集。20世紀の人間が開発した科学技術は、人間の時間と空間に大きな影響をもたらした一方で大気・海洋汚染、食品公害、パンデミック、原発事故による放射線災害など人間環境と生命に危機的ダメージを与えた。このことは科学技術による自然環境と人間生命との共生をいかに進め災害から人命を守るかという問題を突き付けている。本書の執筆者は国土、病、森林、地域、土壌、都市、街、医療など環境と生命の現場で問題解決の合意形成にあたってきた。本書はその経験を生かした博士論文を基にまとめたものであり、鮮やかな問題解決に関係者は大きな示唆を得られるだろう。
目次
近代ソフィアから次代フロネーシスへ―文理融合の夢と実践
第1部 空間と身体の価値構造(国土管理の基層―「わざわい」と「さいわい」の風景;“病”の発生と価値マネジメント―進化プロセスのなかのわたし)
第2部 コモンズ空間の保全と再生(森林管理と合意形成―やんばるの森と世界自然遺産登録;地域環境ガバナンスの実践―トキの野生復帰事業から佐渡島自然再生プロジェクトへ)
第3部 環境問題のコンセプト戦略(自然再生と「ランドケア」―持続的資源管理システムの構造から;「ふるさと感の共有」と都市環境の再生―「ホーム・プレース」としての「エコトピア」;個人と企業を繋ぐ環境戦略と「どんぐり効果」―温暖化対策のためのコミュニケーション)
第4部 次世代フロネーシスの展開(地域イノベーションを生み出す合意形成―多角的人材育成へのアプローチとその方法;医療現場の倫理リスクと合意形成教育―意思決定支援の根幹)
著者等紹介
桑子敏雄[クワコトシオ]
1951年生まれ。東京工業大学教授。研究テーマ:日本・東洋・西洋の思想をもとに、環境・生命・情報などの問題にかかわる価値の対立・紛争を分析し、合意形成プロセスの理論的基礎を明らかにするための研究を行う。社会基盤整備での住民と行政、住民どうし、行政機関どうしの間の話し合いの設計、運営、進行を行いながら、参加型合意形成プロセスを含むプロジェクト・マネジメントの実践的教育研究を進めている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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