内容説明
人間は価値を孕んだ意味の世界を生きる生物だ。だがこの人時独自の「意味世界」も「物的環境世界」との接触を基盤に生起してくるので、日常での知覚・感覚経験の分析は哲学の必須の課題だ。本書は、人間の「物的世界」認識の至微を、体感覚・体運動・物象の知覚というエレメントを通じ、既成概念に埋没することなく、日常経験に密着して描き切った大作であり、読者は従来の哲学書体験を超え、認識のアポリアが次々と氷解する快感を味わうことができるだろう。
目次
第1章 色の特定
第2章 視覚の生理学と脳科学
倣3章 西洋近代哲学および近代生理学確立期の生命論における意識の概念
第4章 感覚と体の広がり
第5章 知覚の空間性
第6章 体という尺度と体の知覚
著者等紹介
松永澄夫[マツナガスミオ]
立正大学教授、東京大学名誉教授。1947年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科中退(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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袖崎いたる
10
デカルト的な理念でいうところの「生活と日常会話」の感覚で経験を哲学していくスタイル。更には誰々がこう言っていて…という形の哲学学論文というより、誰々が拠っていたライトモティーフはこうであり…という形で論は進み、その触感は哲学的に生活することの実践として読める。浩瀚博識な背景知が透ける文体も折り目が多く、生活と日常会話的でありながらそこに通底しているものを言葉によってつらまえようという指向が窺える。読者が面食らうのはその明るさかもしれない。哲学史上の生産的でない拘りを摘出していく潔さには暗がりがないのだ。2017/07/14