内容説明
在職のまま、または職を辞して主に大学院で学歴を再取得する、本書が「流動モデル」と呼ぶコースを選んだ者は、「固定モデル」即ち就業未経験のまま大学院での学習者と比べ、学習への意識や成果、また大学や社会での評価にどのような差異があるのか―「流動モデル」者の比率が高い主要5領域の専門職大学院における調査に基づき考察を進めた本書は、総じて「流動モデル」者の知識・能力の向上を評価するとともに、現在の専門職大学院や労働市場の在り方についても的確な検討を加えた、わが国初の画期的研究である。
目次
第1部 流動モデルの効果(専門職の大学院に通う学生のプロフィール;学知と就業経験の相乗効果を目指す経営系;職業資格取得に葛藤する法科;伝統的大学構造の桎梏をもつ法科;学歴取得の意味に惑うIT・コンテンツ系;資格か経験かが問われる教職)
第2部 流動モデルの内部分化(「中小企業の経営層」という新顧客に開かれた経営系;マネジメント経験が活きる経営系;家族形成とキャリア追求の狭間にある女性)
第3部 社会人の再学習の意味(労働市場との齟齬を抱える経営系;研究者養成機能を模索する法科;2つの大学院制度に揺れる臨床心理系)
著者等紹介
吉田文[ヨシダアヤ]
東京大学大学院教育学研究科博士課程修了、博士(教育学)。メディア教育開発センター助教授・教授を経て、早稲田大学教育・総合科学学術院教授。専門は、教育社会学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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きいち
26
学生時代のドイツ旅行、ミュンヘンで僕を自室に泊めてくれた学生と夜ビール飲みながら話していて、あれ、大人だなあと感じ聞いてみたら実はかなりの年上、一度働いてからの再入学。大学と企業との往復が珍しくなくて、羨ましかった。◇本書は、社会人経験を持って大学院に入学した者と、ストレートに学部から上がった者を比較し、データをもとにかなりな条件付きながら社会人からの再入学者に軍配を上げた研究。決して面白味があるわけではないが、学歴や学習効果というものが、かなり意味づけ次第の概念であることが実感でき、それに刺激を感じた。2015/03/16