内容説明
日中戦争終結5年後の1950年、共産党政権下で旧「満州」各地から集められた日本人鉄道技術者は、万里の長城以南に移動して鉄道建設の任務にあたるよう要請される。「留用」という名の集団連行である。家族を含め約900人がシルクロードの要衝・甘粛省天水に配置され、天水‐蘭州間の鉄道建設に従事した。本書は技術者とその家族らが帰国までの千日近い日々、当地でどのように働き、暮らしたのか、中国の人々とどのような関係を作ったのか、その希有な歴史体験を詳細に記録したものである。戦後日中関係史の知られざる一コマを照射する。
目次
第1章 旧「満州」で「留用」された人びと
第2章 「どこへ連れて行くのか?!」
第3章 シルクロードの交通の要衝「天水」
第4章 「天蘭線」建設と技術者たち
第5章 日々の暮らしのなかで
第6章 異国で学ぶ小中学生たち
第7章 銃殺刑を見せられる子どもたち
第8章 突然の集団引揚げ
第9章 「第二のふるさと」として
著者等紹介
堀井弘一郎[ホリイコウイチロウ]
1952年生まれ。1976年京都大学法学部卒業。2009年日本大学大学院総合社会情報研究科博士課程修了。博士(総合社会文化)。日本大学非常勤講師、都立白鴎高校教員。専門は日中関係史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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BLACK無糖好き
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中国共産党政権下の1950年、甘粛省天水-蘭州間の鉄道建設の任務を要請され、3年弱にわたり従事した約900名の旧満州の日本人鉄道技術者とその家族たちの働きや暮らしの記録。所謂「留用」のパターン。集団連行された形ではあるがそれなりの配慮はあったようだ。撫順収容所ほどではないにしても思想教育は相変わらず。当事者らは置かれた状況の中で地域の住民とも交流を図りながら、自分たちのやれる事をやってきたという事情が伝わってくる。肯定的に受け止めている声が多いその裏で、様々な感情が潜んでいるのだろう。 2017/03/06