内容説明
戦争、原子力、感染症、ポストトゥルース、差別。人類の知は、不可避的に悪へと転じる。だが、そこにこそ善への希望がある。善悪二元論を超えて複雑な現実に対峙するために―新たな社会的想像力を育む12講。
目次
悪をめぐる三つのパラドックス
真実の終わり?―21世紀の現代思想史のために
人種・民族についての悪い理論
近代日本哲学の光と影
私たちの魔法“無感覚”―竹内好を手掛かりとして
清末中国のある思想家の憂鬱―章炳麟の「進化論」批判
儒学から考える「悪」―香港そして被災地
民主主義という悪の閾―「他者なき民主主義」とそのディレンマ
地球上の生命と人類は30年後にどうなっているか
未来社会2050―学問を問う
知識史からみた学問の「悪」
たたかう「文」の共同体に向けて
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
東雲
7
東京大学で行われた様々な分野の専門家によるオムニバス講義。悪に立ち向かうためにはまず悪を定義しなければならない。だが世界を善悪二元論で捉えることはできない。性善説における性は人間の本質(essence)性悪説における性は人間の本性(nature)であり、両立が可能であったりする。ハンナ・アーレントの「凡庸な悪」=思考や判断を停止し外的規範に盲従した結果、人種と民族の混同、政治においては意図的に専門化され民衆が無関心になる状態であったり、何を以って悪の状態になっているか、注意深く考え続けなければならない。2023/06/27