感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かおりんご
22
写真集。ハンセン病施設の写真と、そこで生活されていた方の詩で構成されている。ハンセン病については、あまり詳しく知らなかったのだけれど、この本を通して知りたいと思った。何よりも、著者がアリtoキリギリスの石井さんだったことに驚き。是非、多くの人に手にとってもらいたい。2020/07/30
かさお
21
心に刺さる写真集。平成7年のライ予防法廃止まで実に90年もの間、忌み嫌われ世の中から隔離されたハンセン病療養所13か所を石井正則が訪れた。遺伝でも神罰でも無くライ菌による感染症と戦後には判明されていたはずなのに、結婚は認めても子を持つ事は許さず勝手に堕胎手術をさせていたと言う恐ろしい事実。何の為の研究か、学問か、菌より未知のウイルスより、自分の事しか考えない人間の方が恐い。写真に写る美しい海や山や花は慰めになっただろうか。平均年齢86歳の元患者達。親や家族、自由になっても会いたい人はもうこの世には居ない。2020/07/22
marumo
17
古畑任三郎の助手刑事のうち、小さくておりこうの方を演じていた役者さんの作品集。そういうデータはとくにひけらかされてはいないのですが。「13」とは国内のハンセン病療養所の数です。療養所と知らなければ美しい風景写真のようにも見えます。満開の桜吹雪の向こうに見える建物の中でどんな人生があったのか。私にはこれらの写真から何かを受け取れるほどの素地がない。現在と地続きの時間の中にこういう場所が存在し、そこでしか生きることを許されなかった人たちがいた。せめてそのことを胸に刻もうと思う。2020/06/14
チェアー
11
美しい花を咲かせている土のなかに、患者たちの思いが埋まっている。ほんとうは世の中に向けて叫ぶはずだった言葉が埋まっている。ハンセン病患者への差別をなかったことにしようとする人たちがいる限り、力の限り、引き継いでいかねばならない。2020/10/11
ネジとサビ
6
あちらとこちらを隔てる壁を乗り越えても、見えない差別の壁に行き場もない。 ようやくあちらへ繋がる橋が架かっても、会いたい人達はこの世に居ない。飼い殺しのような場所で、絵や言葉や音楽は救いとなるのだろうか。美しい花の写真すら刺さる。どんなに天気の良い日でも寒々とした印象を受ける療養所。何という人生。もっとその歴史を知りたいと思う。2021/11/22