内容説明
なぜ、戦国の世は終わったのか?「英雄」でもなく「普通の大名」でもない「歴史的人間」としての信長の姿を日本史のなかに位置付ける。宗教、土地、軍事、国家、社会5つの視点から示す新たな歴史観。
目次
序 なぜ、いま「信長」を考えるのか
第1章 信長と宗教
第2章 信長と土地
第3章 信長と軍事
第4章 信長と国家
第5章 信長と社会
終章 歴史的人間とは何か
著者等紹介
本郷和人[ホンゴウカズト]
1960年東京都生まれ。東京大学史料編纂所教授。文学博士。東京大学文学部卒業、同大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。石井進氏、五味文彦氏に師事。専攻は日本中世政治史、古文書学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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春風
19
本郷和人先生の考える歴史学の手続きを、歴史的人間“信長”を通して披露する。歴史を俯瞰するため、信長公に関する紙幅は少なめ。歴史的人間とは、歴史から要請された人間をいう。そのため、小説等のように心には踏み込まないのが鉄則である。現在の歴史学は実証主義が蔓延しているというが、氏は本著で構造主義的に、史料を読み込む事で歴史の下部構造を把握し、それが要請する人間を歴史的人間と位置付ける。歴史にもしもがないのはそういう事だと言い切る。そして時に、構造を脱構築し止揚する経緯までを提示し、新たな歴史学の手法を試用する。2020/04/08
パトラッシュ
11
信長の先見性や革新性を否定して普通の戦国大名でしかなかったと主張する本が相次いでいる。こうしたマルキシズムの系譜を継ぐ歴史家に多い主張に本書は正面から反論する。単純な英雄史観ではなく戦国を終わらせたい歴史の求めを見抜き、耐用年数の切れた足利幕府と既成仏教などの旧制度ではなく合理的な新しい考え方で対しようとした武将は信長だけだったことを描き出す。信長をナポレオンやカエサルらと比較しつつ近代性を論証した秋山駿の著作と似ているが、何より時代の要請に応える力量を持つ「歴史的人間」と位置付けたのが著者の独創だろう。2020/01/21
はやたろう
9
信長を考証材料の起点としながら、その時代の宗教、土地、軍事、国家、社会を考える。結構難しい。2024/04/03
クサバナリスト
9
タイトルは、『信長』だが、人としての信長ではなく、歴史学的に考察し、特に土地や宗教の関連をそれまでの成り立ちとの関連で述べている箇所はとても興味深かった。2020/05/31
shinko0925
3
信長が時代を切り開いた。< 時代が、社会が「信長」を要請していた。歴史の構造から信長を捉えることで、信長が何をしたか、ではなくて、信長はなぜそれをする必要があったのか、を考察する。よくある破天荒で波瀾万丈な伝記ものではないのにもかかわらず、「歴史的人間」信長の「深層」に触れた気がしました。2020/11/25