内容説明
敗戦から3・11まで、ふり向けばいつも上を向いて歩いてきた。豊かさと信じたものは、果たして何だったか。戦後、人は何を求め、生きてきたのか。家族・自己・労働に焦点を当て、歌、映画、小説から仕事、暮らし、性、さらには宗教、アニメまでを題材に、60余年の社会意識の変遷を追う。
目次
序章 “社会意識”とは何か
第1部 壊れかけた労働社会(リストラがやって来た;雇用ポートフォリオの誕生;職場シンドロームの出現)
第2部 家族の変容と個の漂流(戦後家族の願いと戦略;虚の国の旅人たち;「強い個」への欲望)
第3部 アメリカの夢と影―労働・消費・文芸(日本的経営とは何だったか;消費社会の仕組みと気分;村上春樹と対米闘争)
終章 「受け入れられない自己」の肖像
エピローグ
著者等紹介
菊地史彦[キクチフミヒコ]
1952年、東京生まれ。76年慶應義塾大学文学部卒業。同年筑摩書房入社。89年、同社を退社。編集工学研究所などを経て、99年、ケイズワークを設立し、企業の組織課題やコミュニケーション戦略を中心にコンサルティング活動を行なう。現在、ケイズワーク代表取締役。国際大学グローバル・コミュニケーションセンター客員研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬弐仟縁
16
リストラ中高年(62頁)。雇用ポートフォリオ(83頁~)。ポートフォリオは過去や現在や未来の価値を可視化するツール(84頁)。他、気になった頁は102(変革は会社を痩せさせる),120(自己責任は、好機に投資する人間が、結果を引き受ける責任),176(総中流は隠蔽的な社会意識),223(オウムが追求したのは解脱した個、金剛の心),246~(QCサークル:僕が思うに役人がやるべき),278(フォーディズムの黄金の回路:アントニオ・グラム氏、レギュラシオン学派)頁。これらは幸せの必要条件かもしれないが不十分。2014/02/27
きいち
12
「幸せをめざしてきた私たち」が、戦後どんなふうに自己のことを意識してきたか地道に追いかけ、今いる場所をとにかく一度はっきりさせよう、という試み。◇労働や経営といった分野では文化や事件といったネタは入ってこないし、社会意識や「文化の社会科学」だと政治経済側は背景に留まる。でも確かに、自分の「社会意識」を考えると、「仕事してる自分」のことを抜きに自分のアイデンティティは考えられない。デミング賞もエヴァンゲリオンも同じく戦後の出来事、両者を同じ力加減で統合して記述しようという菊地のチカラワザ、とても志を感じた。2013/12/20
ぼのまり
5
タイトルからすると、戦後復興の足跡を辿るような本を創造するが、仕事、暮らしのあり方、歌謡曲、映画、小説といった文化の変遷を追いかけた1冊。お堅い文化的な論考でなく、一連の事件を起こした宗教やアニメなどのサブカルなども取り上げ、日本人が求めてきた形のない「幸せ」というものが何だったのかという点に一考を与えている。現在の自身の立ち位置、見ている方向を再確認する上でも役に立つように思う。2013/07/23
元気伊勢子
4
自分のいる日本が、どのような経過を辿って今に至っているか知りたかった。自分というのは、周りの人間関係や所属するコミュニティだけでなくて、時代の空気感というのにも影響されるのだなと。2020/08/10
えちの
3
高度成長時代に多くの日本人は社会的階層が上がったつもりでいるが、実は大して変わっていないのではないかという意味の一節に、そうかもしれないと思う。 この本がたどった時代を、実家の物置に置いてある安っぽいフランス人形が語っているような気がする。2013/09/05