出版社内容情報
日本国内に70万人以上、世界では500万から1,000万人ものキャリアが存在すると推計されながら、長らく公的対策から放置されてきたウイルスHTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)。本書は、このウイルスが引き起こす成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)やHTLV-1関連脊髄症(HAM)といった難病に直面した当事者たちが、自身を取り巻く社会的困難を解消しようと社会に働きかけてきた軌跡を記述した、切実かつ希望に満ちた実践の記録である。HTLV-1の関係者はもちろん、医療従事者、社会学に関心のある者、そして「自らの生を、自らの手でより良く変えたい」と願うすべての人にとって、重要な示唆を与える一冊。
【目次】
第1章 問題関心
1 本書の概要とその背景
2 HTLV-1関連疾患の概要
3 調査の概要と調査対象者
4 「当事者」概念
5 本書の依拠する視座:「病いの語り」
6 本書の依拠する視座:集合的実践
7 本書の構成
第2章 先行研究の概観
1 HTLV-1関連疾患についての先行研究
2 当事者の手記やドキュメンタリー
3 病いの当事者の経験と、「病いの語り」についての先行研究
4 病い・障害の当事者の集合的実践
5 本書の独自性と意義
第3章 HTLV-1関連疾患当事者の直面する困難
1 公的対策からの放置という困難
2 HTLV-1関連疾患への/当事者への無知と、それに起因する孤独という困難
3 母乳育児規範との衝突という困難
4 小括:当事者が直面する様々な困難
第4章 困難をめぐるHTLV-1関連疾患当事者の経験
1 公的対策からの放置をめぐる経験
2 HTLV-1関連疾患への/当事者への無知と、それに起因する孤独をめぐる経験
3 母乳育児規範との衝突をめぐる経験
4 小括:病いとそれに起因する困難の経験
第5章 困難に対処するために 当事者団体の結成
はじめに
1 設立された背景と、当事者団体に参加する人々の動機
2 当事者団体の取っている戦術
2.1 縦割りの回避
2.2 拒否感を避けるための他の病いとの差異化
2.3 語彙の選択による「フレーミング」
3 小括:困難を解消するための集合的実践の存在
第6章 当事者としての声の提起 HTLV-1対策推進協議会への参加
はじめに
1 分析の対象と方法
2 分析結果
2.1 基礎的な分析結果
2.2 各回の特徴に関する分析
2.3 発言者の立場による分析
3 小括:当事者の声を広め、政策に結び付ける実践
第7章 当事者として地域を変える 地方自治体における粉ミルク補助事業
はじめに
1 粉ミルク補助事業の成立過程
1.1 なぜ粉ミルクだったのか
1.2 鹿児島県内各自治体における粉ミルク補助事業の成立過程
1.2.1 補助制度の成立:鹿児島市における粉ミルク補助事業への組み込み
1.2.2 後続自治体における発展的制度の実現:霧島市
1.2.3 先例としての霧島市の参照:鹿児島市議会における要件緩和
1.3 事業の拡大とそれに伴う交渉:鹿児島県における粉ミルク補助事業の実現
2 小括:実践とその戦略性
2.1 先例となること、それを活用すること
内容説明
人は、どれほどの強さを秘めているのか。日本では100人に1人が感染しながら、世間の認知度は低い状態が続いてきたHTLV‐1。困難な状況に置かれた感染者たちが連帯し、社会を変革していく過程を医療社会学の視座から辿る。
目次
第1章 問題関心
第2章 先行研究の概観
第3章 HTLV‐1関連疾患当事者の直面する困難
第4章 困難をめぐるHTLV‐1関連疾患当事者の経験
第5章 困難に対処するために―当事者団体の結成
第6章 当事者としての声の提起―HTLV‐1対策推進協議会への参加
第7章 当事者として地域を変える―地方自治体における粉ミルク補助事業
第8章 治験・臨床試験を通した、当事者団体の駆動
第9章 病いとともに社会を変える
著者等紹介
桑畑洋一郎[クワハタヨウイチロウ]
1978年熊本県生まれ。山口大学人文学部教授。社会学を専攻とし、ハンセン病やHTLV‐1関連疾患等、病いの当事者の生活をめぐる医療社会学的研究を行ってきた。またその他にも、天理教里親の研究やスケートボードの社会学的研究等も行っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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