出版社内容情報
1923年から1933年までは、ナチス・ドイツの自称であり、通称であり、俗称である「第三帝国」という言説が流布した10年であった。12世紀イタリアで生じた歴史を三分割する思想が、ナチスの語彙とは異なる意味で用いられ、19世紀後半から第一次世界大戦期までのヨーロッパやロシア、それに日本に多大な影響を与えたことは、日本は言うに及ばず、ドイツでも、いまだ学術的に究明されていない。「第三帝国」das Dritte Reich以前の「第三の国」das dritte Reichを初めて本格的に検討する本書は、未開拓領域の全容を明らかにする
内容説明
12世紀イタリア、フィオーレのヨアキムの歴史思想に由来する理念「第三の国」が、もともとナチスの「第三帝国」とは異なる意味で用いられ、19世紀後半から第一次世界大戦期までのヨーロッパやロシア、日本に多大な影響を与えたことは、いまだ学術的に究明されていない。本書では、イプセンやメレシコフスキー、カンディンスキー、トーマス・マンから日本の雑誌『第三帝国』にいたるまで、「第三帝国」das Dritte Reich以前の「第三の国」das dritte Reichをめぐる東西の言説を初めて本格的に検討し、未開拓領域の全容を明らかにする。
目次
序
第一章 ネオ・ヨアキム主義
補遺一 「第三帝国」研究における「第三の国」
第二章 背教者ユリアヌス
第三章 日本における「第三の国」
第四章 東西交点としての「第三の国」
第五章 異端の正統者ルードルフ・カスナー
第六章 東方からの黙示
第七章 ユーリウス・ペーターゼンの憧憬
結び 「第三の国」の行方
補遺二 日本におけるナチス研究の躓き
著者等紹介
小黒康正[オグロヤスマサ]
1964年生まれ。北海道小樽市出身。博士(文学、九州大学)。九州大学大学院人文科学研究院教授。日本学術会議連携会員、日本独文学会会長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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