出版社内容情報
近年、文化人類学、民俗学、福祉学、医学などの視点に立った出産・育児(以下産育)研究が盛んに行われている。これらの産育研究では、妊娠・出産のみならず、各国の伝統的な産後の養生習慣についても言及されている。その背景として現代社会が出産前後の女性の心身や子育てをめぐる様々な困難や問題に直面するなかで、あらためてかつての産後養生習俗の意義や役割を見直そうとする学術的、社会的な関心の高まりがあると思われる。また、これらの伝統習俗の多くは現代社会の医療化の脈絡のなかで新たな装いを伴って受け継がれており、産育をめぐる習俗や文化研究においても興味深いテーマを提供している。
本書では中国都市部における伝統的な産後の養生習慣である「月子」を取り上げ、中国の都市的文脈における伝統習俗の継承と新たな展開およびそれを担う家事労働者である「月嫂」の実践を描くことを通して、中国都市部の新しい産育文化である「科学月子」の形成過程とそこでの「月嫂」の役割を明らかにすることを試みるものである。
内容説明
身内に頼らない産後女性たちを支える「月子」の専門家「月嫂」。中国の伝統的な産後習俗「月子」は、現代の都市部において科学的知見に基づく手法へと変容しつつある。「月子」の新たな担い手である「月嫂」に着目し、新しい産育文化の創造過程を明らかにする。
目次
序章 産後習俗「月子」とその担い手「月嫂」への着目
第1章 「科学月子」の表象と言説
第2章 「月嫂」の職業化と資格化のプロセス―上海市を中心に
第3章 上海好事トレーニングセンターにおける「月嫂」養成の実態
第4章 病院における研修の実態
第5章 「月嫂」による産育実践の遂行と雇用主による受け入れ
終章 「月嫂」の産育実践と「月子」の変容、再構築をめぐる考察
著者等紹介
翁文静[オウブンセイ]
九州大学アドミッションセンター准教授。九州大学人間環境学府博士課程修了。博士(教育学)(九州大学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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