出版社内容情報
第一次大戦をヨーロッパ文明の衰亡の過程として受け止めた大部分のイギリス人は、戦争を勝利で終えたにも関わらず、不安と恐怖と黙示録的幻想をもちつづけ、危機の言説を形成した。終戦は新しい時代のはじまりというよりも、むしろもっと恐ろしい災禍へ向かう通過点として捉えられたのだった。
災禍を未然に防ごうと、大規模な反戦運動が展開され、歴史学、経済学、心理学、生物学、遺伝学などの一連の科学者は戦争の原因を究明しようとした。トインビー、ホブソン、ケインズ、ウェブ夫妻、フロイト、ハクスリー兄弟、ウェルズら著名な知識人たちを本書はとり上げ、彼らは大戦間期の不安の文化のなかで同じ課題を共有したと論じる。
しかし、こうした努力にも関わらず、根本的な解決策を見出すことは叶わなかった。不況、人口危機、スペイン内戦といった一連の出来事を経て、ヒトラーのナチズムの脅威に直面したとき、イギリス国民は文明を救うためにヒトラーと戦うことを決意した。
イギリスの稀代の歴史家が、不安と恐怖と黙示録的幻想に彩られた戦間期を、膨大な一次資料の調査により解明した文化史研究の大著。
内容説明
大戦間期のイギリス人はファシズムと共産主義の台頭をどうとらえたか。不安と恐怖と黙示録的幻想が織り成した1920年代と30年代の文化史を、稀代の歴史家が膨大なアーカイヴ資料から読み解く。
目次
序論―大戦間期のカッサンドラたちとエレミヤたち
1 衰亡と崩落
2 資本主義の死
3 民族の肉体を蝕む病気
4 医薬であり、毒薬でもある―精神分析とその社会的衝撃
5 なぜ戦争は起こるか
6 死への抵抗
7 ユートピア政治学―治療法か、それとも病気か
8 「死の船」の航行―戦争へ向かう世界
9 病的な時代
著者等紹介
オヴァリー,リチャード[オヴァリー,リチャード] [Overy,Richard]
1947年生まれ。イギリスの歴史家。現在、エクセター大学名誉研究教授。第二次大戦とナチス・ドイツについて多数の著作をもつ
加藤洋介[カトウヨウスケ]
1972年生まれ。西南学院大学外国語学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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