内容説明
新自由主義がなぜ日本で必要とされ、影響力を持つことができたのか、歴史をつぶさに振り返り、スリリングに解き明かす。グローバル化もあって貧困層がふえるなか、個人の貯金に教育も老後も委ねられる日本。本来お金儲けではなく、共同体の「秩序」と深く結びついていた経済に立ち返り、経済成長がなくても、個人や社会に何か起きても、安心して暮らせる財政改革を提言。人間らしい自由な生き方ができる未来にするための必読の書!
目次
序章 レッテル貼りとしての新自由主義
第1章 新自由主義へ舵を切れ!
第2章 アメリカの圧力、日本の思惑
第3章 新自由主義の何が問題なのか?
第4章 「経済」を誤解した新自由主義の人びと
第5章 頼りあえる社会へ―人間の顔をした財政改革
第6章 リベラルであること、そして国を愛するということ
終章 自由の条件をかたるときがきた!
著者等紹介
井手英策[イデエイサク]
財政学者。慶應義塾大学経済学部教授。1972年、福岡県生まれ。東京大学卒業。東京大学大学院博士課程単位取得退学。専門は財政社会学、財政金融史。日本銀行金融研究所勤務を経て大学で教鞭をとる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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けんとまん1007
42
悪者を見出し(真実か否かではない)、人の視線をそこへ向けさせることで、わが身を守る・・・そんな時代は終わらせないといけない。もう立ちいかなくなっているのは、わかっていると思うのだが、そこの少しの転換ができない環境を作られている。とはいえ、希望を捨てるわけにはいかない。人の営みへの視線から始めよう。2021/03/09
翔亀
38
【人新世6】我が国が小さな政府と市場の自由化を目指す新自由主義に至ったのは、日本政治と国際政治の力学によることを、50年間の歴史の丁寧に跡付けることにより抉り出した名著「経済の時代の終焉」(2015)から5年。コロナはそんな新自由主義によって乗り越えることができるのだろうか、今は大きな岐路ではないか、という関心から最新刊の本書を読んでみた。新自由主義により、誰が幸福になったのかと問いかける本書は、政策提言の書だ。新自由主義の最大の問題点は、人々に痛みをだれに押し付けるかを争い、他者への不信感を植え付け↓2020/11/29
Francis
20
小田原在住の財政学者井手英策さんの新著。後半の政策低減の部分は今まで井手さんが提唱してきたこととそれほど変わっていない。むしろ本の前半で展開される1990年代以降「新自由主義」がどうして多くの日本人の心をとらえたかを歴史をさかのぼって検証しているところが本書の注目すべき点。本当によくぞここまで調べて考察されたと思う。そしてこの本を読んでかつてブレーンとして関わった旧民進党の後継政党の政治家たちが井手さんの構想を実現しようとしないのかも理解できた。彼らも新自由主義に踊った人たちだったから、なのだ。2020/06/25
ta_chanko
14
石油危機後、貧しい人だけ救済すれば皆が幸せになれる高度成長期は終わり、バブル崩壊によって法人税増税も限界に達した。その結果、法人税・所得税は減税され、消費税は増税、不足分は国債の発行で補うようになった。国債発行額は年々増加し、社会保障給付は切り下げられた。世論も規制緩和・民営化・財政支出削減を受け入れて新自由主義を支持した。結果、世知辛い自己責任論がまかり通り、格差も拡大していった。2020/09/08
くものすけ
13
消費税増税に対する国民の忌避反応の説明がわかりやすかった。欧米各国他は日本より高率であるにも関わらず、反対する根本的要因は昔の財政投融資(国民の預貯金を原資として貸し出しを行う)税という形ではなかったことが一因とか、、、最近でも政府TOPから良く聞く言葉に「自己責任」があるが、この言葉で切り捨てられたら堪ったものではありません。2020/07/13