内容説明
その事件について、ホームズは特に箝口令は敷かなかった。だが事件に深く関わっていた女性が侯爵夫人という身分であり、私自身、複雑怪奇なる感情と騎士道精神にどっぷりと感染していたため、書かなかった。これから先にも、私があの事件を発表することはないであろう。ただ、真実を残すしるべとして、密やかに記しておこうと思う。一八八X年に起こった悲しくも恐るべき事件のことを…。ある午後送られてきた一枚の楽譜。遺された薔薇はフェア・ヴィクトリア、美しい婚約者とハンサムな兄。登場人物はすべてそろった。
著者等紹介
高峰玲[タカミネレイ]
1968年富山県出身。富山在住。1989年同志とWWWA(WORLDS WRITING‐WARRIOR’S ASSOCIATION)を結成。会誌『REVOLUTION』にてVol.1~13まで編集長を務める。WWWA所属
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感想・レビュー
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鐵太郎
10
女王陛下の薔薇作り、薔薇園芸家アーサー・ウォーカー氏が農薬による中毒で死んだ三日後、その妹と名乗るミス・アリス・ウォーカーがベーカー街を訪れた日、事件が始まりました。女性にしては長身で、これで前が見えるのかと思えるほど色の濃いヴェールで上半身の半ばまでおおった娘は、ウォーカー氏の死は事故であろう、と言う推定に反し、そんなはずはない、といいます。 ──シェークスピアの美しいソネット。意外な展開。驚くべき結末。そして、プロローグへつながるフィナーレ。ああ、こういうパスティーシュを書く日本作家がいたんだ。2007/03/20