内容説明
ストア派の宇宙論、キリスト教の救済、近代科学における自然の秩序―「経済」という概念が担ってきた歴史的機能を辿りながら、現代の経済が不可避的に抱え込む危機の本質を解明する。
目次
序章 「信」が揺らぐとき
第1章 経済とは何か?(「経済」の原景;「経済」と超越;「経済」と道徳)
第2章 経済学の「エコノミー」(古典派経済学のエコノミー;近代経済学の「革命」;資本による急き立て―近代経済学の「エコノミー」)
第3章 「自由な主体」のエコノミー―「経済」の規範性について(経済学と規範性;カントにおける自由と規範;理念への跳躍とその欺瞞―カントと経済学)
第4章 声なき声の経済学(ヘーゲル:主人と奴隷の弁証法;ラカン:四つのディスクール;響きの経済学)
著者等紹介
荒谷大輔[アラヤダイスケ]
1974年生まれ。東京大学人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。現在、江戸川大学准教授。専攻は哲学/倫理学。2008年から2010年までフランス国立科学研究センター(CNRS)社会経済融合領域研究所(IRISES)客員研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Zensohya
2
最終節、愛の作品、幻想の純粋な作品化、その作品の純粋な交換=対話、だいぶ抽象度の高い圧縮された議論がなされていて、実に難しく、まさに「謎」として「響き」、脳内が「?」だらけになった。とまれ、現状に不満をもつ人は乱暴に言ってみんなラカン的ヒステリー者、そんなわたしたちから、決して重なり合うことなく一つに収斂することもない、理念の泡立ちが可能であるということ、そこに「他なるエコノミー」を見んとする著者に読書という形で出逢うことができて本当によかった。2022/03/20
葉
2
1章に入る前に囚人のジレンマについて言葉での説明がなされており、ペイオフマトリクスを書いた方が良いのではないかと思った。そこでは、プレイヤーの信について書かれている。経済とは何かと聞かれたら、自分は生き物と答えるだろう。家政(オイコノミヤ)の説明からストア派やロゴスなどのギリシャ哲学倫理の範囲に遡って説明している。アダムスミスやハイエクなどの経済人における経済学の思想からデカルト、ヘーゲルなどの倫理から見る経済などを踏まえて哲学的に経済の説明がなされている。読み物である。2014/11/13