内容説明
マルクスやアドルノの古典や近年の社会学、文化研究の議論を手がかりに、ポピュラー音楽の歴史的発展と資本主義とのスリリングな関係を解明する。デジタルメディア環境からDiY文化やアイドル文化まで最近の変容を描いた新たな章を書き加えたポピュラー音楽研究の必読入門書。
目次
1 ポピュラー音楽と資本主義
2 ロックの時代の終焉とポピュラー音楽の産業化
3 ポップの戦術―ポストモダンの時代のポピュラー音楽
4 人種と音楽と資本主義
5 「Jポップ」の時代
6 「ポスト・Jポップ」の風景
7 ムシカ・プラクティカ―実践する音楽
著者等紹介
毛利嘉孝[モウリヨシタカ]
1963年長崎県生まれ。東京藝術大学音楽学部音楽環境創造科准教授。京都大学経済学部卒。ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジPh.D.(社会学)。専門は社会学・文化研究。特に音楽や現代美術、メディアなど現代文化と都市空間の編成や社会運動をテーマに批評活動を行う。Inter‐Asia Cultural Studies Journal(Routledge)編集委員、北九州国際ビエンナーレディレクターなどもつとめる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
1959のコールマン
43
☆3。せっかくアドルノを持ち出したのだからⅠ章の音楽議論をもう少しつめられなかったのか。Ⅱ章以降は分析というより歴史という感じ。Ⅴ章とⅥ章(日本の音楽シーンを取り上げた部分)に至ってはありきたりな見方、結論になっているのが残念。さらに、ご本人が最後に「なぜなら大衆的なことを拒絶するという超越的な態度までも、いまでは大衆的なものに回収されてしまっている」p274と書いている。なら最初からアドルノ出すなよ(アドルノも存在そのものが『商品化』されて充分大衆化している)。まあ、単純に教科書として見れば充分合格点。2020/06/14
しゅん
7
入門書として最適。ストリーミングとSNSの今にはめても有益。2019/11/08
nizimasu
7
現状の音楽についての個人的な問題意識と重なる本。要は音楽産業ってもはや成熟産業なのという疑問と、そもそも音楽をナリワイにするという行為がごくごく最近の20世紀はじめからのものにすぎないという視点から出発していて好感が持てる。アドルノのマルクス的な指摘である「下部構造が上部構造を規定する」というテーゼは、すべてが金銭に置き換えられる現状の万物の商品化というプロセスと見事に21世紀になって対応している。で、増補版ではさらに最近の配信や音楽産業の凋落も補足していて非常に示唆に富む内容。これは他の産業も同様の問題2013/11/11
ぺん堂
4
音楽やアートは好きだけどチャートを賑わすJ-popへの興味は全然ない、でも資本主義とかそういうのには興味あります!という、ちょっと時代に取り残された気がする僕には面白く読めました。「ポップミュージックは最も成功したポップアートである」というようなくだりが印象的でした。著者も言うように、簡単な見取り図的な内容ですが、流行に疎い僕にも現代の潮流を見る一つの視点を提供してくれる本でした。2014/04/20
アカネ
2
現代に近い部分は経験している話で面白い。音楽と資本主義について深く考えたことがなかった私は、資本主義を利用しつつ皮肉や批判をしてきた手法には驚かされた。また音楽の周りを覆う資本主義が時代に合わせて変化をしながら私たちの社会に浸透しきっているように感じた。昔と違った戦略、音楽利用は批判されるけど新しい戦略考えなきゃ音楽業界も生き残れなくなってるのかもしれないな。これってひょっとすると他の業界でも考えたほうがいいのか?2017/12/01