内容説明
反骨精神をモットーとする香月玄太郎は、不動産会社を興し一代で成功を収めた社長。下半身が不自由で「要介護」認定を受けている老人だが、頭の回転が早く、口が達者。ある日、彼の分譲した土地で建築中の家の中から、死体が発見された。完全密室での殺人。お上や権威が大嫌いな玄太郎は、警察が頼りにならないと感じ、介護者のみち子を巻き込んで犯人捜しに乗り出す。完全密室の殺人、リハビリ施設での怪事件、老人ばかりを狙う連続通り魔、銀行強盗犯との攻防、国会議員の毒殺事件など、5つの難事件に挑む連作短編ミステリー。
著者等紹介
中山七里[ナカヤマシチリ]
1961年、岐阜県生まれ。第8回『このミステリーがすごい!』大賞にて大賞受賞、2010年1月『さよならドビュッシー』にてデビュー。現在会社員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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文庫フリーク@灯れ松明の火
249
『テミスの剣』→『静おばあちゃんにおまかせ』と、逆走ついでに本作。黙っていれば好々爺、本性は武闘派ヤクザよりタチの悪い香月玄太郎72歳。脳梗塞の後遺症で下半身麻痺の身でありながら、障害を遥かに凌駕する強靭な精神と過激な舌鋒・頭脳の切れは、敵も多いが心酔者も多い。介護職の私にすれば省かれている身体介護の部分多いものの、「要介護探偵の生還」で見せる玄太郎のリハビリは、他人に厳しいが、自分には更に厳しいという静刀自に通じるものがある。イタリアン・レッドのチューンアップ車イス操る「要介護探偵の快走」度量のデカさ→2015/03/05
takaC
226
え?ドビュッシーに続く話だったのか。場所や人物をやけに細かく限定してるなと思ったらそういうことだったのね。納得。でも最終話「〜最後の事件」を読み終わってその後の文庫ドビュッシー宣伝ページ見るまで全く気がつかなかったけどね。(笑)2015/01/17
よむよむ
138
豪傑というか、老獪というか、なんとも気持ちの良いジイサマ!確固たる信念に基づく怒鳴りがカッコイイ~ それぞれの事件の謎はわかりやすくて○でした。あと、各分野の情報がパナイっす!M先生登場のおまけつき~ でもってあのラスト・・・嗚呼・・・2012/01/07
ひめありす@灯れ松明の火
130
レーシングカー型車椅子の動き、その疾き事風の如し。裸一貫積み上げてきた合縁奇縁、その繁々たる事林の如し。一度弾けたら止まらぬ罵詈雑言口撃、その凄まじき事火の如し。善ではあるが良ではない性根、その据わった事山の如し。玄太郎翁、齢七十二にしてなお壮健たり。ワトソン役は介護士。ちょっと遅い探偵デビュー。あらゆる欲を認めあらゆる罵倒を経験しい、なお逆境に負けず、己の欲に常に忠実に、欲しい物に向かってはためらわずに手を伸ばす。その天晴れというより他ない生き方は、若き音楽家の手を経て、次代の子供たちへと繋がっていく。2012/05/19
おかむー
129
『さよならドビュッシー』に始まる岬洋介シリーズの番外編。『ドビュッシー』の序章で亡くなった香月玄太郎を主人公に据えた5つの連作短篇集。『よくできました』。下半身不随になっても傍若無人、唯我独尊な玄太郎がそのバイタリティと洞察力で事件を解決…なんだけど素直に痛快というには毒が強すぎのく○ジジイですね。ラスト前に玄太郎本人が迷い岬がフォローしていたけれど、結局は壁にぶち当たっても乗り越えて強くなっちゃう人たちの理屈なんだなぁ。彼らはもちろん理想ではあるけれど、現実としてほとんどの人はそんなに強くないのヨ。2015/06/06