出版社内容情報
旧約聖書の冒頭にある「創世記」。そこで人類は禁断の木の実を食べて神の怒りを買い、楽園エデンから追放されてしまいます。ミルトンは、その背後に壮大なストーリーを想像・創造しました。すなわち、神々の内部抗争です。全能の神と天使長ルチフェル。大宇宙の創造を担ってきた二神の仲違いはなぜ起こり、どういうふうに展開したのか？ミルトンの詩篇を谷口江里也が翻案、21世紀の世界に投げかける神・天使・悪魔、そして人間の原罪をめぐる巨編！
内容説明
神々と天使たちの宇宙を二分する戦いの結末はいかに！？復活したルチフェルの作戦とは？地球と人間の創造の秘密をめぐる壮大なスペースオペラ。
著者等紹介
谷口江里也［タニグチエリア］
詩人。ヴィジョンアーキテクト。スペースコンポーザー。表現史家。ソングライター。石川県出身、横浜国立大学建築学科卒。言語、イメージ、建築空間、音楽などの表現空間を対象に、多彩で複合的な創造活動を自在に繰り広げるマルチクリエイター（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
112
ドレの絵に独自の解釈を入れた文章から成る。クロムウェル率いる清教徒革命の秘書官を務め、国王の処刑をも支持する文章を書いたミルトンが、王政復古下での禁固も経て失明し蟄居生活を余儀なくされた中で娘に口述筆記させた叙事詩。実世界でも視界を失ったミルトンの想像力は、信念をもって加担した革命、処刑、失墜が天使たちの闘いとなった世界を彼に見せたのだろう。ミカエルとデビル（ルシファー）は双子の兄弟であったか。神は恐ろしく慈悲すらない。その間に入る大天使たち。今の私たちにも通じる警告を読み取らねば。 2021/09/11
優希
42
再読です。ドレの美しい絵と共に紡がれる神と堕天使、そしてアダムとイブの物語。読みやすく、コンパクトにまとまっているので、失楽園の世界を思い切り堪能することができました。2024/04/10
優希
40
神に叛乱する堕天使たちの物語なんですね。アダムとエバが天上の楽園を追放される物語と思っていたのですが、天使たちの争いと知り、驚かされます。聖書のエピソードを盛り込みながら、それを堕天使たちの物語に仕上げたのが凄いなと。スケールも大きく、クラクラしてしまいます。元の話は読んだことがありませんが、おそらくかなりコンパクトにしていますよね。単語が若干意訳してるなという印象がありますが、どうなんでしょうか。でも個人的には凄く世界観を楽しめました。ドレの挿絵も相変わらず美麗ですし。いつか原書を読みたいですね。2014/07/17
更紗蝦
10
禁忌を犯したアダムとイブの堕落がテーマかと思いきや、美の追求者のカリスマであるルチフェルの堕落の方がドラマチックに描かれていました。アダムとイブに失望する天使たちよりも、ルチフェルに失望する堕天使たちの方に共感してしまいました。2014/05/08
roughfractus02
7
唯一神が宇宙を創造する『創世記』に対して、清教徒革命を支持した17世紀人の作者は、民主政の失敗と王政復古の中で盲目の身になっても、唯一の権威が支配する世界を拒否したのだろう。創造神オウエイや美貌神ルチフェルらの天界での権力争いは、ドレの挿絵によって『イーリアス』を思わせるほどにギリシャ的に物語化され、堕天使となるルチフェルが地球に侵入する宇宙の構造は、同時代人ガリレイの天動説に則るかに見える。ミカエルが楽園追放されるアダムとイヴに語る人間の苦難の未来ヴィジョンにも新約の黙示録のようなキリストの再臨はない。2022/10/11
