内容説明
『熱り』―日帝支配下の故郷朝鮮を出た愛国青年尹奉吉は、1931年の暮、上海に潜伏中の大韓民国臨時政府国務委員主席、金九にようやく面会する。翌年春の天長節式典で日本軍に爆弾を投げた奉吉は捕らえられ、日本に送られる。彼の処刑地となる金沢には、日本に同化しようとする朝鮮人孫金岩の一家が住んでいた。もの言わぬ娘の月桃。息子の東和は護送される奉吉と駅頭で遭遇する。植民地支配の下でそれぞれの生を懸命に生きる人びと。そこにひそむ怒りの、その「ほとぼり」。『パラシュート』―昭和20年、日本敗戦直前の九州の山村で、墜落した米軍戦闘機からパラシュートで脱出した米兵が捕虜になった。復讐心に駆られて米兵を殺そうとする村人を制止した老女のよりどころは国際法。それを教えた孫は徴兵を拒否して精神異常者とされる。そして敗戦から10年近くを経て、捨てたはずの軍備を、日本はまた持とうとしていた。
著者等紹介
平石耕一[ヒライシコウイチ]
1955年博多生まれの佐賀育ち。大阪芸術大学、日本大学などを経て、演劇活動に入る。『橙色の嘘』(1991年)で文化庁舞台芸術創作奨励特別賞を受賞し脚光を浴びる。2002年、平石耕一事務所を設立。年に2本ずつ新作を発表し続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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がんぞ
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『熱り』は「ほてり」と読み、上海で1928年「天長節」式典に、日本要人に爆弾を投げた尹奉吉(ユンボンギル)がテーマ「何もならないことはわかっている、しかし民族の熱を示したい」。《決行》直前に小学校教諭をしていたというのは史実か?初等教育も途上で放棄したと記憶するが。米国人が共犯。何より!暗殺が成功すれば、《朝鮮》への嫌悪はとめどなくなり《本土追放》のみならず『系図破却』『墳墓破壊』『朝鮮語禁止』となったろうと思われる。そのほうが個々人にとっては良かっただろうが/『パラシュート』は、爆撃機パイロットを…な話2016/10/25