出版社内容情報
吉本家は、薄氷を踏む
ような〝家族?だった。
戦後思想界の巨人と呼ばれる、父・吉本隆明。
小説家の妹・吉本ばなな。
そして俳人であった母・吉本和子――
いったい4人はどんな家族だったのか。
長女・ハルノ宵子が、父とのエピソードを軸に、
家族のこと、父と関わりのあった人たちのことなどを思い出すかぎり綴る。
『吉本隆明全集』の月報で大好評の連載を、加筆・修正のうえ単行本化。
吉本ばななとの姉妹対談(語りおろし)なども収録する。
内容説明
戦後思想界の巨人と呼ばれる、父・吉本隆明。小説家の妹・吉本ばなな。そして俳人であった母・吉本和子―いったい4人はどんな家族だったのか。長女・ハルノ宵子が、父とのエピソードを軸に、家族のこと、父と関わりのあった人たちのことなどを思い出すかぎり綴る。
目次
じゃあな!
父の手
eyes
混合比率
ノラかっ
党派ぎらい
蓮と骨
あの頃
小さく稼ぐ
めら星の地より
お気持ち
ヘールボップ彗星の日々
ギフト
空の座
花見と海と忘年会
’96夏・狂想曲
幻の機械
魂の値段
境界を越える
ボケるんです!〔ほか〕
著者等紹介
ハルノ宵子[ハルノヨイコ]
1957年東京都生まれ。漫画家・エッセイスト。父は思想家・詩人の吉本隆明、妹は小説家の吉本ばなな(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
110
著者は吉本隆明さんの長女。「吉本家は、薄氷を踏むような家族だった」という一文が全てを象徴している。隆明さんと妻の和子さん、次女の吉本ばななさんと(そして、著者自身も)、登場人物のキャラが余りにも立ちすぎて、抱腹絶倒の面白さ。吉本隆明信奉者の幻想を粉砕してしまったのではと著者は心配するが、そんなことはない。ここに描かれている隆明さんの実像には、妙に腑に落ちる納得感がある。父と母を偽悪的に戯画化して描きながらも、深い理解と愛情に支えられた文章は、正に、吉本隆明全集の月報に相応しい素晴らしい連載である。面白い!2024/02/03
どんぐり
71
漫画家ハルノ宵子のエッセイと姉妹対談、菅原則生が著者に聞く“隆明だもの”の3部構成。「群れるな。ひとりが一番強い」と父・吉本隆明に刷り込まれたハルノ宵子が、父親と家族の思い出を語る。自傷タイプの母親、サヴァン症候群だったのではないかという父親、7歳差の妹吉本ばなな。お互いに踏み込んではいけない家族の領域があり、見ない聞かない言わないことでかろうじて“家族”が成り立っていた吉本家。そんな家族のエピソードがポロポロと出てきて、吉本隆明に抱く幻想を粉砕してくれる。→2024/04/16
ネギっ子gen
64
【あの隆明が、友達から奥さんを奪ってしまった、と生涯悩んでた】吉本教信者の幻想粉砕本(笑)。書影:著者によるイラストが絶品。本文イラストも良し。父親や家族のことなどを綴った書。妹・ばななとの対談も収録。「吉本隆明全集」の月報連載等に加筆。宵子は、<詩はいつだって根底にあった。父の書物は、すべてに見える――と言ったら、私は頭のヘンな人だろうか。初期の正に人々を凍らせ、未来ある若者をドロップアウトに引きずり込むような、瑞々しくも暴力的な詩のことばは、なりをひそめても、詩と科学と霊性が、父の思想の地下水>と。⇒2024/03/13
まこみや
57
夫婦喧嘩は犬も喰わない。余所の夫婦・家族のことはブラックボックスで内実はわからない、わかりたいとも思わない。この本に惹かれるのは他ならぬ吉本隆明の身内の証言だからである。キモは“高機能自閉症”という発言だろう。そう考えれば、隆明の飛躍した理論も、和子の幽明境を接する俳句の才能や長女に対する異常な支配依存も、娘たちのADHD的行動もすんなりと納得できる。やがて父も母もボケてゆく。それは著者にとって別な意味で修羅の道であったに違いない。この本は告発の書ではない。苛酷な体験を経てなお敬意と伴に鎮魂する書である。2024/02/29
たま
56
吉本隆明の長女ハルノ宵子さんが吉本隆明全集の月報に書いた家族の思い出、妹のばななさんとの対談、そしてハルノさんへのインタビューから成る本。若い頃吉本の本を買った(読んだとは言いません)世代なので興味深く読んだ。SNSのない時代に直接自宅に押しかけて来る読者たち、彼らと一緒に行く花見や海水浴。ハルノさんは吉本が文筆だけで一家を養い、料理嫌いの妻に代わり(なぜかウーマンリブを罵倒しつつ)弁当から作っていたことを評価していてそれはなるほどと思う。→ 2024/03/07