内容説明
バルセロナの古書店が燃え、世界で一冊しかない聖書が盗まれた(「愛書狂」)。ロンドンの古本屋で一冊の本を買った私にある男が声をかけてきた。「それは私の本でした」(「クリストファスン」)。ウィーンのカフェの片隅に、どんな本でもそのありかを教えてくれる男がいるという(「書痴メンデル」)。書物の達人が、本を主題とする知られざる名作、かくれた傑作を発掘する待望のアンソロジー。
著者等紹介
紀田順一郎[キダジュンイチロウ]
1935年横浜市に生まれる。慶応義塾大学経済学部卒業。書物論、情報論を中心に評論活動をおこなう。ミステリーなどの創作活動も手がける
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
棕櫚木庵
17
昨日に続いて再読本.このテーマに係わる“スタンダード・ナンバー”を集めた感じで,最初読んだときも,10篇のうち8篇は他の本で読んでいた.どの短篇も,本の楽しさと,本好きの罪深さ(^^;)や哀れさをしみじみと感じさせる.▼「薪」は,『シルベストル・ボナールの罪』の序章に当たる部分.『シルベスト・ボナールの罪』は私の愛読書の一つで,スマホに入れて(シー^^;),繰り返し読んでいる.伊吹武彦の訳もいい.「クリストファーソン」は,「H.ライクロフトの私記」の序章として読めそうな気がする.→2021/08/10
さとまる
3
本を愛しすぎてちょっと行っちゃったヤバい人たちを描いたアンソロジー。書痴の執念がコミカルな「シジスモンの遺産」、じわーんと染みてくる「目に見えないコレクション」、ミステリー仕立ての「羊皮紙の穴」あたりが面白かった。2023/10/24
N.K
2
海外の書物を読んでよく思うのだが、日本の作品に比べると、作品の登場人物に対する一体感が高く感じる事が多い。特に、この作品では熱狂的なコレクターが数多く出てきており、その悲劇喜劇が読んでいて心を揺さぶりました。ツヴァイクの「目に見えないコレクション」と「書痴メンデル」はやはり名作。全体的に登場人物の感情が豊富に表現されており、中でも「愛書狂」や「シジスモンの遺産」の突き抜けた書物愛は読んでて怖くもなってくる。そんな作品群の中でも「クリストファスン」は心がホッとする作品。ある意味一番良かったかもしれない。2014/02/02
qoop
2
愛書家の人生悲喜こもごも…な、バラエティに富んだアンソロジー。フランス〈薪〉M.R.ジェイムズ〈ポインター氏の日記帳〉ツヴァイク〈目に見えないコレクション〉〈書痴メンデル〉など、魅力的なチョイスはさすが紀田先生。掉尾を飾るのが掌編ふたつというのも嬉しい読み心地。それにしても、つくづく書物とは呪物なのだと感じる。愛書家とは本に呪われた人々であるなぁ。2013/01/23
philiplip
2
コレクターの話が多いです。物体としての本好きには堪らない。2009/05/17