内容説明
ライカの手触りに恍惚とし、ハッセルのシャッター音に永遠を感じる。ライツにツァイスにローデンシュトック―。めくるめくレンズの誘惑に身を任せながら、カメラを愛し、カメラに愛された哲学者が、技術の進歩にともない変わっていく人の美意識に迫る。撮った画像をいかようにも加工できる。ハードディスクに記録された過去は、いつでもアクセス可能な等価な瞬間として所有することができる。そんなデジタルカメラの特性は「決定的瞬間」を切り取るという写真の意義をどのように変えていくのだろうか。メカと技術と理論の溝を軽やかに飛び越える、新しい写真論の誕生。
目次
1 進歩するもの、留まるもの(テクノロジーは何を変えるか;1996年、デジタルカメラとの邂逅;フィルムスキャナーあれこれ;デジタルスタジオ探訪記)
2 モノクロの自由(何世紀も変化しないプリント;表現するメディア;焼きつけの悦楽;「古いよさ」派の底力)
3 麗しのライカ、愛しのハッセル(コンピュータとライカ;削り取られた銘;フィルム感度100という呪縛;スペイン紀行;巡礼の道;ライカとコダクローム25;ピントグラス上の神秘)
4 「複製」芸術をこえて(オリジナルとコピー;オリジナル・プリントのアウラ;スティルライフへの挑戦;「拡大する」ということ;2001年、素晴らしきコンパクトカメラたち;写真を写真たらしめるもの)
著者等紹介
黒崎政男[クロサキマサオ]
1954年仙台市生まれ。東京大学大学院哲学専攻博士課程修了。現在、東京女子大学文理学部哲学科教授。専門はカント哲学、人工知能・電子メディア論。クラシックカメラをはじめアンティークの収集家としても知られる
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。