内容説明
小豆三粒包める布は捨ててはいけない―かつて母たちはそう語り、ものを大事にする心を娘たちに伝えた。ボロ布を細く裂き、緯糸として織り込んで、新たな布へと再生する「裂織」。木綿の着古しを、家族の仕事着や夜具によみがえらせてきた手の技は、やがて高度経済成長のなかでひっそりと忘れられていった。奥深い色合い。ざっくりとした飾り気のない美しさ。モノがあふれる今日、究極のリサイクル「裂織」が各地で見直されている。手仕事のよろこびを暮らしにいかす人々を訪ねながら、日本人と布のつきあいの歴史をひもといていく。着ること、作ることの意味を問いなおし、心地よい暮らしへのヒントを探る。
目次
1 「着る」ことのいとなみ―衣の日本史(海を渡ってきたワタ;ワタ以前の暮らし―草木をまとう ほか)
2 裂織を伝える人々(裂織の伝統が息づく島―新潟県佐渡郡相川町;北の果ての民の知恵―青森県十和田市)
3 手仕事のぬくもり(春の人気展示会―長野県原村;古布を生かすよろこび―新潟県佐渡郡 ほか)
4 裂織の新しい風(ふたたびの生命をつむぐ―かにた婦人の村(千葉県館山市)
社会とのかけ橋に―くすのき作業所(東京都調布市) ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Yukiko
9
日本の衣生活の歴史を古代まで遡って説き起こし、庶民のボロおりだった裂織、工業化の時代は製品としての機織りで必死だった新潟の女たちにとって贅沢になった裂織、そして現代の裂織の復活、福祉作業所での裂織、様々な日本の織物の様相が述べられたとても内容の濃い本だった。八田尚子さん、お会いしてみたい。もっとこの方の本を読みたいと思った。2020/04/17
aki
5
裂織の特徴や歴史、織り方、福祉施設での裂織について。裂織に対する著者の愛情を感じる。なんだかほっとする、いい本だった。2024/07/03