内容説明
アメリカ東部ニューイングランド地方。ここには、豊かな森と湖に囲まれた暮らしがある。ハコベ咲く晩春、産卵場所を探して歩くカミツキガメ。広大な湿地に、雌ジカの鳴き声響く雨の日。初霜降りる狩猟解禁日、夜明けとともに飛来するカモの群れ。家族と歳月をともに過ごした老犬の死。移ろいゆく風景の中に、今や遠い記憶となった少年の日が、静かに重ね合わされる。父と川釣りに行った夏。銀色に輝くマスの腹。取り戻すことのできない少年の時間をたぐりよせようとする繊細な筆致が、静謐な世界をつくりだしていく。ヘミングウェイの作品世界にも匹敵すると絶讃された5篇のエッセイ。最も優れたエッセイ集に贈られるプッシュカート賞受賞。
目次
1 六月のカメツキガメ
2 ヘラジカ狩猟解禁日
3 父とマス釣りの思い出
4 老犬の死
5 夜明けのカモ猟