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内容説明
ブエノス・アイレスで成り上がったユダヤ人マックスは、深刻な悩みを抱えて旅をしている。女にかけては凄腕だった彼が、できないのだ。17歳の息子に死なれ、火の玉みたいに精力的だった妻が彼を寄せつけなくなってから…。医者にかかり、温泉にいった。パリでは美人を雇った。すべて無駄だった。他の楽しみもむなしいだけだ。「男」でいたいのに。敬虔やユダヤ教徒への劣等感を裏にもち、今や人生に何の意味も見出せない彼は、20年ぶりの故郷で手あたりしだい女や男と悶着をおこす。その場しのぎのハッタリが、彼を恐ろしい罠へ導いているとも知らずに―。第一次大戦前夜のワルシャワを舞台に、時代の狭間で惑う人間の姿を、ノーベル賞作家シンガーが巧みに描く「駄目男一代記」。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yokmin
7
「敵、ある愛の物語」に続いて読了。アルゼンチン・ブエノスアイレスから里帰りのユダヤ人男性、ワルシャワに住むユダヤ人とポーランド人たちの話。テーマとしては興味深い。が、ストーリーは秀逸とは言い難い。著者がノーベル賞を受賞した理由は、イディッシュ語で小説を書いたからなのかと勘ぐりたくなる程。2014/11/02
belier
1
舞台はロシア領だった20世紀初頭のワルシャワ。この町の近郊で生まれ、アルゼンチンで成り上がったやくざなユダヤ人の男が中年クライシスといえる危機に陥り、ヨーロッパを巡った後に帰郷を果たす。生と性を取り戻そうとユダヤ人街であがき彷徨する物語。外国暮らしが長い俗物の主人公が異邦人としてユダヤ人社会を動き回ることで、近代社会へ移行しつつしぶとく残っている当時のイディッシュ文化を垣間見させてくれる。ストーリーは、したたかに生きてきたはずの主人公が気弱になったせいで展開が二転三転する。焦らされるのが逆によかった。2023/12/09
okadaisuk8
0
ポーランド出身で悪行で財をなし、アルゼンチンで資産家となったものの、息子の急死で不能になり、妻との関係が悪化し、故郷に戻り女を片っ端から口説いて色目を使い性欲を取り戻そうとするユダヤ人の男の話。ってなんじゃそりゃといいたくなるが、ユダヤの風習を捨てたつもりが、故郷でそうではないことに気づき、ユダヤ人にあることに向き合っていく…というのが真のテーマだ。となるとマラマッドが思い浮び、実際、何となくこじんまりとした感じとか似ている部分もあるが、シンガーの描くユダヤ人の方が、ギラギラしている気がする。 2015/02/16
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