内容説明
現代文明を棄て昔ながらの生活に戻ろうと、七人の若者たちが片田舎の古い農家を借りて共同生活を始めた。厳しい冬も越え、コミューンは順調そのものに見えたが、彼らの生活が記事になり、初めての観光客がやってきた日からすべてが一変する…。理想の共同体がたどる皮肉な展開「昔に帰れ」、無人の家に灯る明かりが夫婦を追いつめていく「別荘の灯」、MWA賞候補作の2短篇をはじめ、第二次大戦末期のヨーロッパ戦線を背景に、自分たちだけの掟に従って生きる男たちが演じるグロテスクな死と暴力のドラマを描いて強烈な「大尉のいのしし狩り」、嫌われ者の画家をめぐる若き芸術家たちの悪ふざけが思わぬ結末を呼び寄せる「スターリングの仲間たち」、ニューヨークのど真ん中で秘密裡に実施された奇妙な実験計画「緑色の男」など、第一短篇集『ヨットクラブ』が好評を博したイーリイの異色短篇、全15篇を収録。日本オリジナル編集。
著者等紹介
イーリイ,デイヴィッド[イーリイ,デイヴィッド][Ely,David]
1927年生まれ。アメリカの作家。新聞記者から作家に転身、1960年代から70年代にかけて異色短篇の名手として活躍。「ヨットクラブ」でMWA(アメリカ探偵作家クラブ)最優秀短篇賞を獲得した
深町真理子[フカマチマリコ]
翻訳家
白須清美[シラスキヨミ]
翻訳家
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
69
「裁きの庭」は最後まで言わないという怪談だからこその怖さを掻き立てられる文章力が踏襲されていて素晴らしい。「グルメハント」は舌が肥える程、募る一種の怖さが滲み出ているのが可笑しくも恐ろしい。しかし、アンチョビとマカロニの和え物は食べたいぞ!「いつもお家に」で妻が録音機で聞いたのは夫に依存する醜い自分だったのだろう。一方で自立している夫は録音機を止めたのが意味深。「ぐずぐずしてはいられない」は犠牲を強いた者の因果応報。グランギニョル化しても映えそう。「走る男」は忘れていたとしても罪は追いかけてくる事実が苦い2016/09/28
キムチ
43
イーリィ・・いつかは読んでみたいとずっと思っていた。訳は深町さん、面白くないはずがない!との期待通り、何ともシュールな不条理の世界を堪能させてくれた。ショートくらいの短編集なので、細切れリズムになかなかのめり込めなかった。中盤を過ぎて、読み止まらず、後半8編は何やら悲しく、哀れでこちらの心がシュン。人は環境によって生きざるを得ない、ポリシーなんてあってないとき・・もある、臨機応変も一つの才能。。なんて独りごち。「グルメハント」実に楽しく、垂涎。数点、子なし夫婦エピソード。気持ち一つでありゃいいけど。2015/07/17
本木英朗
21
デイヴィッド・イーリイの、日本独自の短編集である。俺は今までに2回読んでおり、今回が3回目である。第二次大戦末期のヨーロッパ戦線、テネシー州の山岳地方の兵士4人組は、自分たちだけの生きてに従って生き、屠った敵の数を銃床に刻んでいる男たち。一方、新しく中隊長に赴任した大尉は軍紀一点張りの男。両者の軋轢はやがてグロテスクな暴力と復讐のドラマとして噴出する……という「大尉のいのしし狩り」や、食の芸術家ともいうべきフランス随一の美食家がイタリアで消息を絶ち、パリの食通仲間12人が捜索隊を組織。(→)2020/01/11
くさてる
19
奇妙な味、怖い話、なんともいえない後味の話がつまった短編集。どの短篇がお気に入りになるかでそのひとの性格まで分かりそうです。わたしのお気に入りは消しても消してもいつかともる灯りに怯える夫婦の運命を描く「別荘の灯」、一人で家にいる妻を次第に追い詰めていく防犯装置の声が彼女にもたらしたものは……という「いつもお家に」奇妙でキュートで歪んだラブストーリー「最後の生き残り、いまの日本でもたくさんいる限界集落に住み着く若い人々のもとで起こり得る物語だよねと思った「昔に帰れ」などです。バラエティ豊かで楽しめました。2016/12/17
本木英朗
17
デイヴィッド・イーリィの、日本オリジナル短編集である。これまでに俺は、東京で2回、弘前に帰ってから1回読んでおり、今回で4回目だ。現代文明を棄て昔ながらの生活に戻ろうと、七人の若者たちが片田舎の古い農家を借りて共同生活を始めた。厳しい冬も超え、コミューンは順調そのものに見えたが、彼らの生活が記事になり、初めての観光客がやって来た日から、全てが一変する……という「昔に帰れ」など15編を収録。やっぱり超凄かったよね。さすがは作者であります。(→)2023/09/02
-
- 電子書籍
- 天より高く 第8巻