感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
本木英朗
18
A・B・コックスはすなわちアントニー・バークリーの別名義だ。というか最初はこちらから作家として登場したらしい。そして本作は1927年に英国で発表されたのだ。日本では2004年に小林晋の手によって発表された。俺も1回目と2回目はすぐに読んで、3回目は2008年のことだった。4回目が今回となる。しかしまあ、もう一つの名前であるフランシス・アイルズの第3作目(これが最後の作品でもある)と比べると、やっぱり明るい空気に満ちている。どっちもアントニイ・バークリーのことだと思っても、やはりなあ。まあいいけどね。2019/02/23
歩月るな
14
〈人を騙す快感と騙し続ける罪悪感〉伏線を鏤めて回収して行く圧倒的な語りの技量。死体が無い殺人事件、面白いに決まっている(寛容な心は必要だが)。あらすじ通りの話と思う勿れ。「殺人を起こしたと思いこんだ人間が起こす行動を見てみる実験」が事の発端だが、家具を手に入れる(ドイルの結婚資金)為の計略が実を結んで行く展開はまさしく「犯罪が出来あがって行くまでの過程」を濃密に描いており、次第に事件は計略家の手を離れて行く。フランシス・アイルズの胎動は既に始まっており「心理学者も顔負け」の黒幕の動きには目を見張るものが。2016/05/14
uni
9
何とも洒落たユーモア満載のお話!笑。犯罪学が大好きな2人が考えついたのは、ありもしない殺人事件を仕立てあげ、観察することw周りも巻き込んで大騒動になるも、悪ノリで次々楽しんでゆきますw主人公は殺人事件の犯人に仕立てあげられ、仕掛人の1人の美女と手錠で繋がれ逃亡するはめになりますが、この2人のドタバタな会話もユーモア満載で楽しい☆騙されてるのに紳士過ぎる主人公が愛しすぎるw登場人物全員が愛すべきキャラクターです。私大好物です。いいな、私も彼らの仲間になってこんな悪ノリやってみたい笑2013/02/08
星落秋風五丈原
7
本編の主人公プリーストリー氏には、一向に冒険願望がない。三十六才にして友人からは「ペポカボチャ」「カサガイ」呼ばわりされるが、本人にとっては馬の耳に何とやら。このまま平穏な一生を送るかと思われたが、ある夜ピカデリーで見知らぬ女性に助けを求められるという、かつてない事態に遭遇する。うら若く美しき女性の願いを断れないジェントルマン、プリーストリー氏は求めに応じるが、なぜか彼女と二人、手錠につながれ殺人犯として追われる身に…。スクリューボールコメディの第一人者、プレストン・スタージェスの映画のワンシーンみたい。2005/01/10
かりさ
7
バークリー別名義作品ということでどんなトリックが?ミステリが?と読み始めましたが、ミステリ云々というよりもユーモアたっぷりな展開にすっかり楽しく一気読み。さえない独身男・プリーストリーの身に降りかかる予想外の事態。しかも殺人犯となって謎の美女と手錠に繋がれての逃走。ちょっとした犯罪学の実験のつもりが思わぬ大事件へと発展していくさまは喜劇を見ているかのよう。どこまでも誠実なプリーストリーとローラのやりとりがほのぼの微笑ましくて好き。お洒落でロマンチックなラブコメディ+ミステリです。2010/01/29