内容説明
類まれな珠玉の物語を紡ぎだし、現代ユダヤ文学の最高峰にそびえたつ、ノーベル賞作家、アイザック・バシェヴィス・シンガー。82歳のいまなお健筆をふるうアイザックを他ならぬ文学の道へと導いたのは、1944年に逝った偉大な兄、いまは忘れられた作家イスラエル・ヨシュア・シンガーだった。リアリズムの手法でユダヤ人家族の歴史をかいた兄。悪魔の跳梁する幻想的な寓話をかいた弟。ポーランドのユダヤ教ラビの子として生まれ、伝統的な世界との葛藤のなかから故郷をはなれてアメリカにわたった2人は、そこでそれぞれ独自の文学を開花させた。2人のシンガーの作品と生涯を丹念に解きあかし、ヨーロッパとアメリカにおけるユダヤ人の運命をうきぼりにする力作評伝。
目次
1 父と息子たち
2 名声
3 ポーランド
4 政治
感想・レビュー
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刳森伸一
3
ノーベル文学賞受賞者アイザツク・バシェヴィス・シンガーとその兄でやはり小説家のイスラエル・ヨシュア・シンガーの評伝。最初の章はバシェヴィスとヨシュアの子供時代から小説家になるまでの伝記で、残りはヨシュアの長編小説を解題しながら二人の文学に迫る。最も興味深いのは最初の章だが、その後の章も邦訳のないヨシュアの長編小説を比較的詳しく解説しているので貴重だと思う。ヨシュアの小説はバシェヴィスの小説とはタイプが異なり、バシェヴィスが兄を尊敬しつつも、異なる価値観を持っていたことが良く分かる。2017/02/16