内容説明
誰より愛しい父の声も、風が木々をゆるがす音も、洗濯女の歌声も、聞こえない。18世紀初頭のシチーリア。聾唖の少女マリアンナは、広大な領地をもつ貴族の家に生まれた。13歳で伯父に嫁ぎ、愛を知らぬままつぎつぎと子を産む。身を取りまく静寂が、少女を書物の世界へとみちびく。ゆたかに息づく内なるものに耳を澄ませつづけたマリアンナは、自由と愛、新しい時代の知性に、とまどいながらも目覚めてゆく。障害は、牢獄ではなく、開かれた窓となったのだ。そしてある日、船出の時が訪れる―。ジャスミンの馥郁たる香り、太古の海とアフリカからの風、落日を前にした豪奢な貴族社会を背景に、魅力あふれる登場人物によって織りなされる豊穣な物語。イタリアの代表的文学賞カンピエッロ賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
すいれん
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………タイトルに騙された。過激で刺激的な内容に圧倒されまくり。一気に読んで脳が酸欠気味。2013/06/11
結城
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ふえー、読むの大変だった。でも、濃密な匂いをたっぷり味わえたぜい。乾いたシチーリアの匂い、貴族たちの発する怠惰であまやかな匂い、主人公が発する静寂の匂い。2011/04/17
takeakisky
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聾唖のマリアンナ。 心地よくするりとあたたかな彼女の世界へ入る。 シチリアの貴族家族。 早すぎる、そして燃えるような愛情はない結婚。 内面と外界。 軸足の置かれ方。 静かで、 怒りさえも静かで。 何かを自分の心のために求めることを知らず。 自分のために生き始めるのに遅いことはないのか。 本当におこったことなのか、そうでないのか、薄ぼんやりとした霧の向こう。 とりとめもなくたゆたうように読み終える。 英タイトルThe Silent Duchess。マリアンナ・ウクーリアの長い命。興味深い作家を知る。2023/02/11