感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はる
4
この小説はマンがフランスに亡命中七年を費やし書かれたアンリ四世の生涯の物語。単純に伝記・歴史小説として読むのは困難だと思う。丹念な歴史的資料の読み解きから16世紀のアンリを浮かび上がらせ、20世紀欧州の境遇をオーバーラップさせ、そこにある精神を書き上げた小説と見た。アンリの生きたフランスは宗教と諸侯が利害を奪い合う脆弱なまだまだ門・家の集合体であったやうだ。ユグノー出身のアンリが心に夢見たことは、宗教からの自由と平等、国の担い手たる農民商人たちが安心して鱈腹食える国家建設。2020/11/29