内容説明
1899年秋、ウィーンを震憾させた4件の子殺し事件―。事件はなぜ起こり、そして急速に忘れられたのか。『夢判断』を発表したばかりのフロイトは、なぜ沈黙を守りつづけたのか。センセーショナルに書きたてた新聞記事をもとに事件を克明に再現、神聖な家庭という理想と母性愛の全能を信じて疑わなかった当時の社会意識を明らかにする。カール・クラウスやシュニッツラー、ヒトラーの言動を織り込みながら、世紀末社会の謎に満ちたからくりを鮮やかに解き明かす、スリリングな歴史ノンフィクション。
目次
第1章 ヘトヴィヒ・ケプリンガーの物語―世紀末ウィーンの殺人と自殺
第2章 フンメル事件―児童虐待と母性愛の神話
第3章 クッチェラ事件―児童虐待と児童期の無垢
結論 ローザ・マリアネック事件―クリスマスの殺人と空想