内容説明
十歳の少女だった〈私〉がみつめた高校生シェリルとリックのひたむきな恋。あれから数十年、自らの結婚に苦い思いをかみしめる〈私〉がいまいちど、あの愛を甦らせる。60年代初めのニューヨーク郊外の街を背景に、うつろいゆく愛のきらめきを結晶させた現代小説の秀作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
りつこ
41
邦題がちょっと古めかしく感じるが、物語も60年代のロングアイランドを舞台にしたちょっと懐かしい雰囲気。最愛の父親を亡くしたことで同じ年頃の少女より大人びていたシェリルが不良のリックと付き合い、ある日突然姿を消す。シェリルの母親が二人を引き離したと怒るリックは仲間をつれて乗り込み事件に発展する。この二人だけではなく語り手の母親、近所の人たちのことも丁寧に描かれ、この時代の雰囲気や空気が伝わってくる。最後のシーンがとてもいいなぁ。若さ故の過ちを乗り越えることを予感させてとても素敵だ。2016/04/10
miyu
34
自分の内にある疵を持て余し、やるせなくどうしようもない若いころ惹かれるのはたいてい同じように傷ついた異性だ。その傷の本質は表から見えるものとは少し違い本人にとって心に抱えるものは重い。シェリルは父親を亡くした。まだ保守的だった時代のロングアイランドで父親の存在の喪失は致命的なこと。リックの母親は精神を病んでいて家中の小銭をかき集めては家出を繰り返す。二人が近づいたのは自然だし、しかもその行き着く先は未熟さ故に必然だった。that night という原題が哀しい。大人になってこそ真に理解できる珠玉作だ。2017/01/09
zzz
1
that's nightを「愛しあっていたのに」って訳すセンス。いいな。ちょっとすれたティーンエイジャーの様子がつぶさに描かれていてすてき。最後のシーンは切なくて素晴らしい。
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