ブルックナー・コレクション<br> 嘘

ブルックナー・コレクション

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  • サイズ B6判/ページ数 343p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784794921864
  • NDC分類 933
  • Cコード C0397

内容説明

ロンドンのマンションから50歳の独身女性アナが姿を消した。母一人子一人、老母につくしてその最期を看取ったアナは、こんどは母の友人で、一人暮らしのマーシュ夫人に献身しようとする。だが、その古風な誠実さが夫人を苛立たせる。正反対の女を妻にしたのちもアナを思い切れない主治医ハリディ、それぞれの理由で独り身となったマシュー夫人の娘と息子…。周囲の人びとにとってアナは、皮肉にも「失踪」してはじめて存在感をもつ。アナはどこへ?迷いと矛盾にみちたさまざまな人生を緻密に描いて、作家ブルックナーの成熟をうかがわせる傑作。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

きりぱい

5
母を看取るまでずっと独身で尽くしてきた50歳のアナ。とても親切でいい人なのに、一緒にいると煩わしくなってくるというアナの評価に滅入る。なのに嫌じゃなく読ませるところはブルックナーの持ち味。滅入らせるヒロインでありながら、自省し、人を見抜く目が冷静で鋭い。それに比べて脇役たちの自省と他人観察は自己満足で愚か。嘘にもっと劇的な裏があるはずという思いは軽くいなされるけれど、颯爽としたラストには気持ちがほどける。2010/10/29

やまはるか

3
 読んだことあるかもと疑いながら、何が「嘘」なのか確かめようとする探求心で読んだ。中年・老年の婦人の揺れるような心の動きが細々記され、これぞブルックナーと感じた。最後の場面で、過去に読んでいることを確信した。意識して2度読みする場合と、無意識の場合とあるが、無意識に2度読みする方が心理実験のようで面白い。2019/02/13

Shinya Fukuda

2
アナという独身女性が失踪したところから小説は始まる。アナは母親の世話をして中年になってしまった。賢く自制心がある前世紀的な女性。本当はもっと自分を出してもよいのに世間が想定したアナ像に自分を当て嵌めてきた。それをブルックナーは嘘と呼んでいる。原題を辞書的に訳せば詐欺になるらしいがそれでは作者の意図が伝わらないと判断し訳者の小野寺氏は嘘と訳したそうだ。アナは主人公だかアナ以外の登場人物が生き生きと描かれている。ミセス・マーシュは老人だが自立心の強い女性。医師ハリディはインテリだが弱い性格で妻や舅に手を焼く。2023/11/12

serene

2
若くもなく、美しくもなく、華やかさもなく、友だちもなく、行動を慎み、言葉を飲み込み、作り笑いをしながら、静かに生きている。 自信がないのだ。 なのに、自尊心はある。 それはもう、ひと一倍。 そんなヒロインに、自分を見る思いがした。 だから、ラストがうれしかった。 2011/02/22

Junko ama NANA

1
心理の奥の奥の真理が綿々と綴られる。英国小説の粘質さは凄まじい。「おひとりさま」小説は、少し前にピムの「よくできた女」と大いに共通。英国はこのジャンルが確立されているのか?そこかしこに、自分と同じ性質を的確に表現されたような一文があり、ギクッとする。2015/04/28

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