内容説明
十九世紀の人である「私」はある日の夢の中で、五百年前の農民反乱のただなかにまよいこんだ。攻めよせる領主軍との戦闘。酒場での村人たちとの宴。そして、反乱の指導者であるジョン・ボールとの月下の聖堂での対話。イギリス史上名高い1381年の「ワット・タイラーの乱」の渦中にある村を舞台に、モリスが創造の糧とした中世民衆文化への愛と、圧政下にある人間解放への道を描いた歴史ファンタジーの名品。短編「王様の教訓」を併録。
著者等紹介
横山千晶[ヨコヤマチアキ]
1960年、福岡県生まれ。慶応義塾大学文学部英米文学科卒業。同大学大学院文学研究科博士課程修了。現在、慶応義塾大学助教授。19世紀英文学、および英文化専攻。共著に「都市論と生活論の祖型」、訳書に「西洋書誌学入門」「中世を夢みた人々」ほか
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感想・レビュー
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bapaksejahtera
11
英国史読書の発展でワットタイラー絡みの本を探し本書に行き着く。19世紀の社会主義者でデザイナーであり文筆家、幅広い活動を展開した人物の著書である。舞台は著者の時代から5世紀遡る百年戦争時、農奴が次第に自由民となったイングランドを舞台に「イヴが紡ぎアダムが耕した時代誰が領主であったか」と訴え、領主階級に対して反乱を呼びかけた僧侶ジョン・ポールの許に、夢の中で著者は吟遊詩人に乗移り赴く。農民反乱の中世末期の様相を描き、Jボールと世の行く末を語る。中世の様相と共に勃興期の英国社会主義の心情に触れることができる。2022/02/09
fumi
1
ラスキンの著書への寄稿文を読み、モリスが社会主義運動にも関心があったことを知った。この著作の後半あたりから、現代人も突き詰めて考えなければ気づきそびれてしまうような、まさに、現代社会の問題が熱く語られているような気がする。2012/11/27
壱萬参仟縁
1
「富める者から奪い、貧しき者にあたえよ。人の命は自分の望むことをおこなうためにあるのであり、権力をふりかざして命令する人間の望むことをおこなうためにあるのではない」(31ページ)。ごもっともである。実際は、富める者は貧しき者から剥ぎ取るのであり、権力者には平伏しているのが現状なのだが、なんとかならないものか、と現代でも思う。「金持ちが自分たちの利益のために法を作るという慣習は終わりを告げる」(141ページ)との指摘もあり、現代の為政者も傾聴してほしい箇所ではないか。社会主義小説の現代的意義を感じる一冊。2012/06/29
ゆりっぺ
0
2000年11月24日
りっか
0
普通の人が見過ごしてしまいそうなものたちもつぶさに観察し、細かく描写しているところはさすが芸術家ならでは。2006/03/03