出版社内容情報
東京都国立市は、人口7万6000人弱の小さな自治体である。市が設置する「くにたち男女平等参画ステーション・パラソル」の活動は、全国の自治体に配置されているジェンダー関連施策の担当職員のなかではわりと知られた存在で、これまでに何度もメディアで紹介されてきた。
注目を集める理由の一つは、2018年に国立市が施行した「国立市女性と男性及び多様な性の平等参画を推進する条例」にある。性的指向および性自認などの公表(カミングアウト)をするかしないかの選択は個人の権利であることを明記し、それを第三者に暴露する「アウティング」を日本で初めて明確に禁止したもので、「パラソル」はこの条例にもとづく取り組みを推進するための拠点として開設された。
加えて、この条例にはもう一つの特徴がある。DV(ドメスティック・バイオレンス、家庭内暴力)の被害者支援を重視していることだ。国立市を拠点に活動する「NPO法人 くにたち夢ファームJikka(ジッカ)」は、DVなどの困難な問題を抱える女性たちに制度の壁を越える支援を届けることを目指し、2015年に設立された。行政との密な連携による先駆的な取り組みが徐々に知られるようになり、今では全国各地から支援を求める女性がやってくる。Jikkaとパラソルの活動は、現在の国立市のジェンダー平等施策を支える柱となっている。
こうした国立市の取り組みは、市民たちから寄せられる声によって形づくられたものだ。その背景には、「市民参加のまちづくり」の長い歴史がある。市民の声は、どのように行政を動かし、まちを変えていくのか。そこに反映される市民と行政の関係とは、どのようなものなのか。ジェンダー平等に向けた国立市の挑戦は、まさにこうした問いに対する一つの答えを示している。
市民の声がジェンダー平等のまちをつくる。本書が描くのは、現在もなお進行中の、その実例である。
内容説明
市民の声はどのように行政を動かし、まちを変えていったのか。「誰も排除しない社会」をつくるために取り組んだ施策の舞台裏を描く。
目次
第1章 「市民参加のまちづくり」の歩み
第2章 「男女平等」に向けた施策のはじまり
第3章 ジェンダー平等のための条例をつくる!
第4章 ジェンダー平等に向けて自治体ができることは何か―条例を活かすための取り組み
第5章 困難な状況に置かれた人々への支援―官民連携による女性パーソナルサポート事業
第6章 ジェンダー平等推進のための拠点づくり―「くにたち男女平等参画ステーション・パラソル」の活動
第7章 誰も傷つけない社会をつくる!―国立市の挑戦
付録資料
著者等紹介
太田美幸[オオタミユキ]
一橋大学大学院社会学研究科教授。博士(社会学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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