出版社内容情報
大雪山連峰を舞台に繰り広げられる自然・動物・人間の壮大な物語。読む者の心を捕えて離さぬ動物文学の最高峰が再生!本書は、1956年から毎日新聞に連載された『山のキバ王』を、小・中学生から読める挿絵入り小説として新たに書籍化したものです(国土社刊・二分冊の旧版を新装合本)。60年以上前の作品ながら、一向に古さを感じさせないストーリーで、まさにいま読むべき小説と言えます。
当初、連載は100回の予定でしたが、大好評を博し、一年以上にわたり351回まで続きました。その後、漫画家・石川球太さんの作画で『少年マガジン』(講談社)に一年以上連載されたほか、1978年にはアニメ『大雪山の勇者 牙王』として放映されました(フジテレビ)ので、現在50歳以上の方々には馴染み深いかもしれません。本書が若い読者を得れば、三世代にわたって読み継がれることになります。
このたび本書の刊行にあたり、北海道上川郡東川町のご協力を得ることができたのは、物語の主たる舞台が大雪山連峰だからです。その主峰旭岳(二二九一メートル)の麓で繰り広げられたキバと殺人熊ゴンとの戦いをはじめ、すべてはこの町で起こった出来事なのです。
『牙王物語』には、作家・戸川幸夫が生涯大切にした生き方が強く投影されています。人間に一番近しい動物、素朴で純真な犬の姿を借りて、人がその一生を尊く、強く、堂々と生き抜いていこうとする際に体験するであろう喜びや悲しみ、そして苦しみや怒りが、全編を通じて生き生きと表現されているのです。キバの気高い姿は、発表当時の読者の心にずしんと響いたのでしょう、その後長らく愛され、60年の月日を超えてここに再生します。今後も老若男女を問わず、心に響く作品として読み継がれていくことでしょう。(編集部)
戸川幸夫[トガワユキオ]
著・文・その他
戸川久美[トガワクミ]
解説
田中豊美[タナカトヨミ]
イラスト
著者等紹介
戸川幸夫[トガワユキオ]
1912年、佐賀県生まれ。旧制山形高校(現・山形大学)の理科に入学。1937年、東京日日新聞社(現・毎日新聞社)に入社。太平洋戦争中、海軍報道班員として南方を回る。終戦後も記者として活動したが、1955年、初の小説『高安犬物語』が直木賞受賞。以後、動物小説を次々と発表し、「動物文学」をジャンルとして確立。1965年には、西表島でイリオモテヤマネコを発見。1968年「戸川幸夫子どものための動物文学」(国土社)でサンケイ児童出版文化賞。1977年に「戸川幸夫動物文学全集」で芸術選奨文部大臣賞を受賞。多数の小説や児童文学作品を手掛ける。1980年紫綬褒章、1986年三等瑞宝章受章。2004年5月没
田中豊美[タナカトヨミ]
1939年三重県に生まれる。1969年より、図鑑、絵本、雑誌などに動物のイラスト専門に描く
戸川久美[トガワクミ]
認定NPO法人トラ・ゾウ保護基金理事長。父の影響で野生動物保護活動に関わり、2009年にトラ・ゾウ保護基金を設立し、絶滅に瀕するトラ、ゾウ、イリオモテヤマネコの保全活動を行う。インドに出向き、現地協働パートナーと共にトラやゾウの保全対策や、違法取引防止活動を行う(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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