出版社内容情報
世界的人気を誇る北欧インテリアの意匠と豊かな福祉国家の形成はどのように関連しているのか?鋭い視点から描くユニークな文化史。シンプルで機能的な家具や日用品、そして色鮮やかなテキスタイル。いわゆる「北欧インテリア」の起源は、スウェーデンにあるといわれている。こうした北欧デザインが、日本を含む世界の市場で得ている人気は絶大だ。他方で、スウェーデンがつくりあげてきた高度な福祉国家体制も、長らく注目の的となってきた。スウェーデンに暮らす人々の標準的なライフスタイルを好意的に紹介する言説も、各種メディアにあふれている。
公正で平等な社会を築き、誰もが安定した快適な暮らしを営めるようにすることは、多くの人々の願いであり、それをつくりあげてきたとされるスウェーデンに羨望のまなざしが向けられるのは不思議なことではない。そして、暮らしの舞台を彩るインテリアを販売するイケアが、「豊かな福祉国家スウェーデン」のイメージを前面に掲げてきたことも、ビジネスのうえではきわめて有効な戦略だったといってよいだろう。
だが果たして、スウェーデンが世界の注目を集める福祉国家であるということは、住まいの文化やインテリア・デザインとどう関係しているのだろうか。スウェーデンの近代デザインが市場で支持されていることと、スウェーデンが福祉国家をつくりあげてきたことの間には、どのようなつながりがあるのだろうか。
実のところ、国際的評価の高いスウェーデン・デザインが生まれたのは、スウェーデンで社会民主党が政権に就き、福祉国家の形成に向けて歩みだそうとしていた、まさにその時期だった。福祉国家形成の背景には、デザインと住環境をめぐる運動があり、それらは人間形成の思想とも密接に結びついていたのである。本書は、そのときスウェーデン社会で何が起こっていたのか、人々の住まいと暮らしはそれによってどう変わったのかを、「住まいと人づくり」をめぐる文化史として描き出す試みである。(おおた・みゆき)
太田美幸[オオタミユキ]
著・文・その他
内容説明
「北欧スタイル」はいかにして生まれたのか?世界最初の野外民俗博物館「スカンセン」から、近代デザインと福祉国家形成の歴史をたどる。
目次
序章 スウェーデンの暮らしとデザイン
第1章 古き良き景観を守る―野外博物館スカンセンと民族ロマン主義
第2章 「美しい道具」をつくる―ヘムスロイドの伝統と刷新
第3章 「美しい住まい」の提案―カール・ラーションとエレン・ケイ
第4章 都市労働者の住環境―世紀転換期のストックホルム
第5章 日常生活をより美しく―スウェーデン近代デザインの思想
第6章 「国民の家」の住宅政策―住宅供給の理念とその背景
第7章 「美しい住まい」の実践―趣味を育てる消費者教育
終章 人と社会を育てる住まい
著者等紹介
太田美幸[オオタミユキ]
一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程単位取得退学。博士(社会学)。スウェーデン・リンシェーピン大学客員研究員、鳥取大学講師、立教大学文学部准教授を経て、一橋大学大学院社会学研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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