“写真記録”これが公害だ―北九州市「青空がほしい」運動の軌跡

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“写真記録”これが公害だ―北九州市「青空がほしい」運動の軌跡

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  • サイズ A5判/ページ数 192p/高さ 21cm
  • 商品コード 9784794810649
  • NDC分類 519.219
  • Cコード C0036

出版社内容情報

著者の記録作家としての原点は公害にある。経済成長が何よりも優先された時代、気がつくと身の回りの自然は汚染され人々の生活は破壊されていた。「人はいつから命よりもカネ儲けが大事になったのか」。その答えを探すためにカメラを手に、この国の不条理を記録してきた。
 えいだいさんが生まれ育った福岡県香春町(かわらまち)は、炭坑節にも唄われた「石炭とセメントの町」である。大学を中退し、六年半勤務した香春町の教育委員会を辞めて「鉄の町」 戸畑市(現北九州市戸畑区)の社会教育課に勤務したのは1962年、えいだいさんが29歳の時だった。転居からほどなくして、幼い二人の娘に喘息の症状が現れた。「大変なところに引っ越した」と思ったそうだ。
 当時の北九州工業地帯は「七色の煙」と形容され、工場からの降灰で洗濯物が外に干せない状況だった。ところが聞こえてくるのは「町の繁栄は企業のおかげ」という声。煙を吐き続ける工場を前に、誰も不満を口にできない。戸畑市の職員だったえいだいさんの、公務員の枠に収まりきれない反骨魂に火がついた。「公害のしわ寄せが真っ先に及ぶのは、家庭や育児をあずかる女性たちだ」。地元の女性たちと始めた運動は、やがて「青空がほしい」という市民キャンペーンとなり、全国の公害克服運動へと繋がった。
 公害は人間の生命や尊厳を軽視し、経済発展を優先する国家と企業のもたれあいによって生まれる。今の日本で、その体質がなくなったと言えるだろうか。東日本大震災による福島第一原発事故を経験した現在、社会のための技術が利益追求の道具となり、人の命や健康を犠牲にするような使われ方は許されないことを私たちは身をもって学んだ。
「人間の英知は科学を創造し、発展させた。しかし、それで人間はしあわせになったであろうか」。えいだいさんは本書の中で、こう指摘している。この言葉には今を生きる人々への厳しい問いかけが込められている。(本書「復刻によせて」より/西嶋真司 映画『抗い 記録作家・林えいだい』監督)

林えいだい[ハヤシエイダイ]
1933年福岡県香春町生まれ。記録作家。ありらん文庫主宰。戦争や朝鮮人強制連行などをめぐる埋もれた史実を掘り起こしてきた。『実録証言 大刀洗さくら弾機事件』など著書多数。半生を描いたドキュメンタリー映画『抗い』が全国公開中。

内容説明

反骨の記録作家の原点となった写真集(1968年刊)を完全復刻。戦後史アルバムともいえる貴重な写真約140点収録。当時全国的に注目を集めた「青空がほしい」運動の軌跡をたどり、その今日的意義を論じた詳細な解説を付加。初版に収めきれなかった写真など充実の補足資料付。

目次

人間疎外の町
金属の嘆き
煙の中の生活
枯葉作戦
海は死んでいる
忘れられた子どもたち
いつの日に青空が…
公害逃避行記

著者等紹介

林えいだい[ハヤシエイダイ]
1933年12月4日福岡県香春町生まれ。記録作家。ありらん文庫主宰。早稲田大学文学部中退後、故郷に戻り香春町教育委員会に勤務。1962年、戸畑市教育委員会に赴任、三六地区および東戸畑地区の公民館で婦人学級を担当し「青空がほしい」運動にかかわる。70年、作家専業となる。1967年読売教育賞、1969年朝日・明るい社会賞、1990年青丘出版文化賞、2007年平和・協同ジャーナリスト基金賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

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tellme0112

4
写真で残すってすごいなと2021/09/28

Nさん

3
1968年刊行の写真記録が、2017年に解説付きで復刻。北九州の公害被害をこれでもか!と掲載。百聞は一見にしかず、写真は全てモノクロだが、「死の町」の様相を呈する。写真に添えられた住民の悲痛な叫びが当時のやるせなさを伝える。窓を閉めても灰が入り、洗濯物は真っ黒。皆が咳をし、子どもの鼻毛が濃くなった。そんな中ですら、人々(労働者)の意識は「会社あってこそ」。町や人を汚し、殺した上での発展。パラダイムの変化を感じる。「青空がほしい」運動に寄与した要因は、主体の知識獲得、補償要求をせず改善要求に徹したことか。2018/05/08

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