出版社内容情報
賽銭箱に100円玉投げたら、つり銭でてくる人生がいい」。これは長渕剛の名曲「RUN」の一節だ。大学について、これほど的確にいいあらわしたことばはない。わたしはもう大学をでて五年になるが、おもっていることはただひとつだ。カネを返せ。
おさないころから大学にいけば幸せになれるといわれ、そうかとおもっていってみれば、とんでもない授業料を請求される。しかも、学部四年かよってみてもぜんぜん幸せにならない。それではとおもい、大学院にもいってみたところ、状況はさらにひどくなる。さらに、カネがないなら奨学金があるよといわれ、もらってみればじつのところ、多額の借金。いまや635万円にふくれあがってしまった。カネ、カネ、カネ。地獄である。きっと、これはわたしのような院卒ばかりでなく、おおくの卒業生にもいえることだろう。
ほんらい、大学とは幸せの賽銭箱みたいなものである。幸せをねがい、あればカネを投じるし、なければ両手をあわせて祈ればいい。仏はひとを差別しないし、見返りも期待しない。カネを投じたひとにも、両手をあわせたひとにも、なにもしなかったひとにも、つり銭がでてくるはずだ。そして、ひとの幸せに尺度はない。恋がしたい、酒がのみたい、おいしいものが食べたい、本がよみたい、おしゃべりがしたい。どんなことをねがってもいいわけだし、どんなねがいかたをしてもいいわけだ。幸せは、ふくらめばふくらむほどいい。大学には仏がいる。真実だ。
でも、いまの大学は、「社会に役だつ人生」「役所や企業でのしあがる人生」だけが幸せなんだとウソをつき、大金をむしりとって、やれ就職だ、やれはたらけと、みんなを地獄におもむくように駆りたてている。まるで、仏ではなく、強欲な生臭坊主がいるみたいだ。どうしたらいいか。ヤッツケルしかない。本書では、そのための武器として「学生に賃金を」ということばを提示した。これほどまでの高学費は、なにを意味するのか。学生を借金漬けにすることで、だれが得をしているのか。そんな問いをひとつひとつ考えながら、まずはカネを返してもらうところからはじめよう。(くりはら・やすし)
【著者紹介】
1979年埼玉県生まれ。東北芸術工科大学非常勤講師。専攻はアナキズム研究。著書に『G8サミット体制とはなにか』(以文社、2008年)、『大杉栄伝』(夜光社、2013年)などがある。
内容説明
ありえないほどの高学費。奨学金という名の借金。バイト・就活漬けの日々。…学生生活はなぜここまで破壊されてしまったのか!?想像してみよう、無償の大学を。万人の自由な生が花開く時空を。
目次
第1章 大学無償化の思想
第2章 奨学金地獄
補論1 対談 院生問題―いま、「学生に賃金を」を考える(秋山道宏×栗原康)
補論2 論考 大学賭博論―債務奴隷化かベーシックインカムか
第3章 “借金学生”製造工場
補論3 論考 大学生、機械を壊す―表現するラッダイトたち
第4章 悪意の大学
巻末特別座談会 さよなら、就活!こんにちは、夢の大学!(渡辺美樹+大滝雅史+岡山茂+栗原康)
著者等紹介
栗原康[クリハラヤスシ]
1979年埼玉県生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士後期課程満期退学。現在は東北芸術工科大学で非常勤講師をつとめている。専門はアナキズム研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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