出版社内容情報
国民一人ひとりが生活の中で幸せを実感でき、そのような状態を将来世代にも継承することができる持続可能な社会は、環境と経済、環境と社会が両立されることで実現される。そして文化は、それらの関係を取り持つものである。
本書では、まず第1部でこのテーマをそれぞれ総論的、各論的、または事例的に論述した五篇の論文を収録している。これらは、久留米大学経済学部文化経済学科の創立10周年を記念して開催された公開講座の内容をもとにしてまとめられたもので、専門家だけでなく一般読者をも意識している。
本書の第2部は、同じく創立10周年を記念して開催された二つのシンポジウムをまとめたものである。シンポジウム「筑後川流域の陶芸文化と小鹿田皿山」は、筑後川流域に形成された陶芸文化の現状と将来について、映像作家・故中村孝一氏が残した映像資料を参照しながら、文化経済学の視点から話し合ったものである。筑後川流域は、中国大陸と朝鮮半島に隣接する地理的環境を背景に、小石原(福岡県)、小鹿田(大分県)、一の瀬(福岡県)、白石(佐賀県)等の焼物生産地を形成し、特色ある窯業生産地として長い歴史をもつ。
二つ目のシンポジウム「これからの都市デザイン―コンパクトシティの実現をめざして」では、都市のコンパクト化を独自の方法で実践しておられる森雅志富山市長に特別講演をいただいた。続くパネルディスカッションでは、モータリゼーションとスプロール化によって活気を失ってきた都市を、コンパクト化によっていかに再生させるかが話し合われた。コンパクトシティの実現は、少子高齢化、人口減少、環境問題などの面だけでなく、学術・文化など人々の創造的活動の場の活性化という面でも非常に重要な課題である。
本書を通じて、環境・経済・文化が統合されたまちづくりをめぐる対話の輪を広げられればと願う。(だたい・ただし)
【著者紹介】
1944年生まれ。久留米大学経済学部教授。専門は文化経済学・地域経済学・観光学など。『文化の時代の経済学入門』(共著)他。
内容説明
持続可能な社会は、環境と経済の両立、環境と社会の両立によって実現!これらの関係を取り持つ「文化」の重要性。
目次
第1部 論文集:環境と経済と文化の統合(文化経済学からの視点;循環型社会形成の理念とその推進方策;地域文化と地域活性化―沖縄県うるま市勝連町「肝高の阿麻和利」を中心に;文化の消費とマーケティング;公教育の文化経済論)
第2部 シンポジウム:地域文化とまちづくり(筑後川流域の陶芸文化と小鹿田皿山;これからの都市デザイン―コンパクトシティの実現を目指して)
著者等紹介
駄田井正[ダタイタダシ]
1944年、大阪府生まれ。大阪府立大学大学院経済学研究科修了。1970年から久留米大学に勤務。現在久留米大学経済学部教授。もともと理論経済学・経済学史を専門としていたが、近年はポスト工業社会の観点から地域の振興に関心をもち、文化経済学・地域経済学・観光学などに専門を移している。その関係で、1999年からNPO法人筑後川流域連携倶楽部、2003年からNPO法人九州流域連携会議の理事長
藤田八暉[フジタハチテル]
1945年、福井市生まれ。青山学院大学大学院国際政治経済学研究科修了。環境庁の草創期から環境省の創設に至るまでの約30年間にわたり、公害法や環境影響評価法などの立案、施策の実施など環境政策の推進に携わる。退官後、大学教授に転じ、2003年から久留米大学経済学部教授。専門は環境政策学。研究テーマは、環境アセスメント制度、循環型社会形成、地球環境保全政策など。学会・社会活動は、環境アセスメント学会理事、環境福祉学会理事や、久留米市環境審議会長など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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