出版社内容情報
本書の初版(旧版)が公刊されたのは2004年4月。日本企業の第二次ベトナム進出ブームが始まり出した時期であった。また、同じ頃、中国華南に進出していた台湾企業が、次の展開としてベトナムへの関心を深めてもいた。そのような事情の中で、ベトナムのミクロの事情を精査し取りまとめた本書は予想を超える反響を呼び、2006年には「増補版」を公刊することができた。それからさらにしばらくの時が経ち、日本企業のアジア展開の関心はインド、ミャンマーなどにまで広がっていく。
この間、ベトナムはチャイナ・リスクを懸念する向きからは「チャイナ・プラス・ワン」と位置づけられ、多くの視察団が派遣されたのだが、現実の事態は必ずしもそのように進んでいるわけではない。やはり東アジアにおける中国の存在感は大きい。そのような状況も踏まえながら、筆者たちはその後、中国広東省北部の韶関市(『中国華南/進出企業の二次展開と小三線都市』2008年)、さらにベトナムに接する広西チワン族自治区(『「交流の時」を迎える中越国境地域』2011年)の調査を重ね、中国とベトナムの関係とその可能性を模索してきた。しかしやはり出版市場では、ベトナムのミクロを扱った書籍への要請が依然として大きく、「増補版」も数年で完売となった。またベトナム側でも、ベトナムの産業・企業事情についての類書がないためもあり、再刊への要請があることがわかった。
そこでこのたび、「増補新版」の形で新たに出版することとした。新動向を捉える補足情報として、この5年ほどのベトナム経済の動きについて共編者の池部が補論を加筆した。池部は広東省広州市に駐在し、華南とベトナムを長年にわたり踏査し続けてきた経験に基づき、主として中国華南からベトナム経済をみるという視点で「チャイナ・プラス・ワン」の実像を詳説している。初版から8年が経つが、この「増補新版」によって、むしろ冷静にベトナムの「意味」を考えることができるのではないかと思う。本書がベトナムと日本のこれからを考えていくための踏み石になっていくことを願う。(編者 関 満博)
内容説明
投資環境整備に着手して10年余、「チャイナ・プラス・ワン」の実像とは?経済・産業・企業事情を精査し、日・中・越関係の未来を展望するベトナム・ミクロ研究の決定版。産業研究・ビジネス界必携。2000年代後半以降の最新動向を加筆した新版。
目次
ベトナム市場経済化の基本構造
ベトナム産業経済の輪郭
工業団地の展開と日本企業
国有企業の現状と私有企業の登場
ベトナム南部に進出する日本企業
ベトナム北部に進出する日本企業
外国投資の環境整備と課題
産業インフラとロジスティクス
ベトナム金融システムをめぐる諸問題
移行期経済の流通、マーケティング
ベトナムの産業発展と日本企業
ベトナムの投資動向と今後の展望
チャイナ・プラス・ワンの実像
著者等紹介
関満博[セキミツヒロ]
1948年生まれ。1976年成城大学大学院経済学研究科博士課程単位取得。専修大学助教授、一橋大学大学院教授を経て、明星大学経済学部教授、一橋大学名誉教授。博士(経済学)
池部亮[イケベリョウ]
1969年生まれ。2006年青山学院大学大学院国際政治経済学研究科修士課程修了。日本貿易振興機構を経て、福井県立大学地域経済研究所准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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