出版社内容情報
☆女性の生殖健康とポスト・チェルノブイリ世代の長期健康研究を踏まえ、フクシマ後の生命と「世代間の共生」を考える女性の視点によるチェルノブイリ25年研究
2011年3月11日の東日本大震災と共に発生した福島第一原発の事故は、チェルノブイリ原発事故の影響調査にかかわってきた私たちにとって、衝撃以外の何ものでもなかった。しかも原子炉三基が事故を起こしているという現実は信じ難いものであった。事故の規模や放射能の広がりの不明さ、政府の対応、「専門家」という人々が語る「健康への影響は少ない」という言葉……。すべて25年前のチェルノブイリ原発事故後の状況が再現されているかのようであった。私たちは、チェルノブイリ事故後に生を享けた子どもたち(ポスト・チェルノブイリ世代=未来世代)の健康状態について20年以上調査研究を重ねてきた。「チェルノブイリの放射線被害は小児甲状腺ガンだけ」という「専門家」の言葉とは裏腹に、さまざまな病気が汚染地域で広がり、「健康でない子どもたち」は増加の一途をたどっている。それはなぜか。原発事故で放出された放射能による生態系汚染は、その生態系の中にある人の身体を汚染し、身体の中にあって内なる生態系ともいえる子宮内をも汚染している。未来世代はその汚染の中から生まれてくるのである。本書ではチェルノブイリの未来世代への放射線の健康影響について、女性の視点で追及し研究を重ね、フクシマ事故の起きたその年にたどりついたひとつの「仮説」を紹介する。同時に、チェルノブイリ事故による子どもたちの健康被害はなぜ世界に伝わらないのか、「国際原子力村」の科学者たちによる健康被害過小評価の歴史を検証し、「公式見解」=「科学」を問うている。フクシマ事故は日本のみならず世界に対し、21世紀の「科学」を私たちがどのように選択するのか、意識の変革を迫っているのではないだろうか。本書が未来世代と「共生」できる社会を選びとるための、ひとつの“糧”になってほしいと願っている。(著者 吉田 由布子)
内容説明
本書はチェルノブイリの未来世代への放射線健康影響について、女性の視点で研究を重ね、フクシマ事故の起きたその年にたどり着いたひとつの「仮説」を紹介する。原発事故による子どもたちの健康影響はなぜ世界に正しく伝わらないのか。「国際原子力村」の科学者たちによる健康影響過小評価の歴史を検証し、今日の科学文明の意味を問う。
目次
1章 生命と健康―「科学を問う」ということ(自分史から―「科学を問う」ことを学ぶ;生命の視座;生態系汚染と生殖健康(リプロダクティブ・ヘルス)
「生態学的安全」を問う)
2章 放射能汚染が未来世代に及ぼすもの(チェルノブイリの未来世代に何が起ころうとしているのか―手探りの調査から「仮説」までの研究アプローチ;仮説ポスト・チェルノブイリ世代の非ガン疾患増加に対する放射線影響―エピジェネティクスの観点から)
3章 チェルノブイリ健康研究からフクシマを問う(チェルノブイリ二五周年国際会議場に飛び交った「フクシマ」の声;チェルノブイリ事故の衝撃と女性たち;「国際原子力村」はチェルノブイリ事故の健康影響を如何に評価してきたか;告白―私たちが現地調査の中でぶつかった研究上の問題点;フクシマの現在(二〇一一年一二月)を問う
まとめ―チェルノブイリ健康研究における二〇一一年の新しい知見と提言)
4章 3・11以後、「脱原発の思想」をあらためて紡ぐ(原発利用の選択に「倫理」はあるか;モスクワ会議へのメッセージ;私たち世代にとって原発とは何か―生態学的倫理をめぐって;科学文明の転換点に立って、「脱」の新しい思想を紡ぐとき;一五歳の少女の声から)
結 伝え続けたい言葉
著者等紹介
綿貫礼子[ワタヌキレイコ]
サイエンス・ライター。専門は環境学、平和研究、エコロジー。東京薬科大学卒業。「チェルノブイリ被害調査・救援」女性ネットワーク代表。2012年1月30日歿
吉田由布子[ヨシダユウコ]
千葉大学卒業。「女性ネットワーク」事務局長
二神淑子[フタガミキヨコ]
愛媛大学卒業。キエフ大学大学院国際関係学部修了。「女性ネットワーク」副事務局長
サァキャン,リュドミラ[サァキャン,リュドミラ][Саакян,Людмила С.]
モスクワ大学日本語科卒業。「女性ネットワーク」スタッフ。現在、ロシア国営テレビ・ラジオ放送会社国際放送部門「ロシアの声」勤務(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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yoshi
ぽこにゃん
松尾圭 (MATSUO Kei)