出版社内容情報
★90年代初頭の設立以来「進出中小企業の駆け込み寺」として機能してきたセンターの歴史を整理し、その未来を展望する!
2008年8月の末。初めて訪れた広東省深圳【シンセン】市のテクノセンターの印象は、実に新鮮なものであった。大勢の若い女性従業員が一斉にラインに取りついている姿というのは、華南では普通の光景なのだが、ここ深圳テクノセンターは何かが違っていた。
また、日本の大学生が十数人滞在していることも目を惹いた。かれらは女性従業員の中に交じり、「中国で何が起こっているのか」「働くこととは何か」を実地に学んでいるように見えた。学生たちが負担するのは往復の旅費だけで、宿泊費、食費等は一切徴収していなかった。学生たちは滞在日数を重ねるほどに、背筋を伸ばしていくように見えた。
深圳テクノセンター。それは、華南の地に咲いた、熱意ある日本人たちの「思い」の深まりなのであろう。センターは日本の中小企業の中国進出を徹底的に支援し、また、日本の若者の育成に力を注いできたのである。
だがこの10年、訪れる度にテクノセンターは変わっていった。「世界の工場」とされた華南地域は、一気に「世界の市場」となっていった。これまで日本の中小企業の「駆け込み寺」とされてきたテクノセンターが、新たな時代に向けてどのように進化していくのか、現在はその大きな転換点であるように思える。
数年前から、このテクノセンターのことを後世に書き残しておく必要を痛感し続けていた。そして今回、ようやくその機会に恵まれた。テクノセンターがこれまで担ってきた仕事の「重さ」からすると、私たちの仕事はわずかなものにしかすぎない。それでも、大きな転換点にあるテクノセンターの次の時代を考えるにあたって、その歴史を振り返り、現状を整理しておくことの意味は小さくないのではないかと思う。
この大きな転換の時期を乗り越え、テクノセンターがさらに進化し、私たちにまた新たな「感動」を与えてくれることを願っている。
内容説明
「中国進出は日本企業の不可避の課題。経験者のわれわれが支援しよう」―90年代初頭、香港在住の日本人ビジネスマン有志たちによって設立された深〓(せん)テクノセンター。誕生から17年、この「進出企業の駆け込み寺」は経済環境の激動を経て、さらなる飛躍に向けて歩みはじめている。
目次
序章 深〓(せん)テクノセンターとは何か
第1部 中国華南とテクノセンターの基礎的条件(華南/世界への輸出拠点を形成;テクノセンターの成立と発展 ほか)
第2部 テクノセンターと中小企業(テクノセンター進出の基本形;テクノセンター進出企業の新たな動き ほか)
第3部 テクノセンターに集う人びと(テクノセンターの日本人駐在者;テクノセンターで働く女子従業員 ほか)
深〓(せん)テクノセンターの未来
第4部 補論/テクノセンターへの思い(テクノセンターの日々;人生を決めたテクノセンター ほか)
著者等紹介
関満博[セキミツヒロ]
1948年富山県生まれ。1976年成城大学大学院経済学研究科博士課程修了。現在、一橋大学大学院商学研究科教授。博士(経済学)。受賞:1984年第9回中小企業研究奨励賞特賞。1994年第34回エコノミスト賞。1997年第19回サントリー学芸賞。1998年第14回大平正芳記念賞特別賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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