出版社内容情報
「政府開発援助(ODA)」という言葉に、読者はどのようなイメージをお持ちだろうか。先進国が途上国に対して行う政府ベースの国際協力活動の中心を成すのがODAであるが、マスコミで日本のODAが話題になるとき、ほとんどの場合は何かの不祥事についてであり、ODAにはあまり良いイメージを持っていない読者のほうが多いのではないか。しかし、その下で行われてきた具体的な事業が、アジア、アフリカ、ラテンアメリカなどの国々にとってどれほど重要で、かつ実施するのに多くの困難が伴うものなのか、なかなか理解されていないのも現状ではないか。そして、そうした現場に直接的に関わる技術協力部門の事業を青年海外協力隊などで知られる国際協力機構(JICA)が担当してきたことも、あまり知られてこなかったと思われる。グローバル化社会の中で、先進国と途上国の人々がそれぞれの社会・文化のあり方を尊重しあって、新しい「技術」を求め生みだしあうことは、経済的な視点からだけではなく「技術と人々を結ぶ視点」から開発事業を推進することでもある。本書は途上国への技術協力を専門の仕事とするJICA国際協力専門員12名が、そうした「技術と人々」のつなぎ役としてそれぞれの現場で現地の人々とともに学んだことや、専門家としての仕事の意味を、それぞれの自分史と重ね合わせながら真摯に綴ったものである。
★いずれもJICA国際協力専門員★ 武田長久(参加型開発)、時田邦浩(農業・農村開発)、清家政信(農村開発と開発行政)、林俊行(地方電化)、田中由美子(ジェンダーと開発)、今井千郎(環境行政)、山本敬子(上水道開発)、牧野修(情報通信技術)、山形洋一(感染症対策)、原晃(人的資源開発)、増子博(森林開発)、渡辺正幸(防災・水資源開発)
内容説明
国際協力専門員。あまり聞き慣れない名称かもしれない。国際協力機構(JICA)が世界各地で展開している国際協力の技術部門の具体的な活動を専門職とする者たちの呼称である。その数、約九〇名。それぞれが専門の分野を持ち、JICAという組織の中で国際協力の職人集団を形成している。本書に参加した一二名の専門分野は、参加型開発、農業・農村開発、開発行政、地方電化、ジェンダーと開発、環境行政、上水道開発、情報通信技術、感染症対策、人的資源開発、森林開発、そして防災・水資源開発と多彩である。そこで本書では、途上国が抱えるこれらさまざまな課題を、各章ごとに一つひとつ浮かび上がらせながら等身大の途上国の姿を描いてみることにした。これによってそれぞれの分野ならではの課題やアプローチのあり方を浮き彫りにし、「国際協力の仕事」をする上で必要とされる根本的な姿勢・考え方・視点というものの総体を示すことができればと考えたからである。
目次
「人」による国際協力
参加型開発―百聞は一見にしかず
農業・農村開発―私の天職
農村開発と開発行政―私の大学
地方電化―近代的で便利な生活
ジェンダーと開発―はるかな地平線に向かって
環境行政―科学少年が発見したもの
上水道開発―第二の人生
情報通信技術―もう一つの技術者人生
感染症対策―「際」を生きる
人的資源開発―ボイキン村から始まった国際協力
森林開発―森と人の共生を目指して
防災・水資源開発―平和でなければ成し得ないこと
著者等紹介
林俊行[ハヤシトシユキ]
1953年、神奈川県小田原市生まれ。95年より国際協力専門員。75年、東海大学工学部卒業後、制御盤制作会社、コンピュータ・ソフトウエア会社などを経て79年から2年間、青年海外協力隊員(マラウィ理数科教師)。84年、筑波大学大学院地域研究研究科国際学修士(東南アジア専攻)取得後、開発コンサルタント会社を経て現職。91年、コーネル大学大学院都市地域研究科地域科学修士。マラウィ長期専門家のほか、JICA調査団長や短期専門家などとしてザンビア、ルワンダ、シエラレオネ、リベリア、ガーナなどのアフリカ諸国、アジア諸国およびグアテマラなどの出張業務に携る。その他(財)国際開発センター電力事例研修セミナー講師など。日本アフリカ学会会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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壱萬参仟縁
Sanchai