出版社内容情報
スペイン北部のブルゴスに近いアタプエルカ山地で、40万年前から35万年前の人類の化石が発見されたのは、1976年のことだった。そのときから発掘計画がはじまり、いまでは28体以上のネアンデルタール人の祖先にあたる4000個以上の化石が出土している。さらに周辺から、80万年前の6体の人骨が発掘された。発掘はいまも進行中であり、頭骨と下顎骨と骨片が発掘される程度のほかの遺跡と違って、最初の埋葬儀礼がおこなわれたこの場所には、人骨のすべての細部がそろっていた。つまり、アタプエルカ山地はアフリカをでたホモ・エルガスターがネアンデルタール人に進化するまでの過程を推定できる、世界最大のもっとも充実した遺跡となっている。
わが国にも知られるスペインの代表的な古人類学者フアン・ルイス・アルスアガは、本書でアフリカに誕生した最古の人類が、ユーラシアを舞台にして現代人(クロマニョン人)にたどりつくまでの包括的な見取り図を作成した。本書の最大の特色は、イベリア半島から中東と中央アジアにかけて、100万年以上にわたって分布したネアンデルタール人とかれらの祖先の生態を、地理(風景)と気候(連続した氷期と間氷期)と動植物(生態系)に深く関連づけて考察したことにある。著者はさらに解剖学や関連科学の成果を動員して、ネアンデルタール人の精神現象にまで立ちいって論じている。
読者は本書によって、ネアンデルタール人が現代人と無関係に進化したとしても、現代人とおなじように明確な意識をもって、意識的に行動したヒト属だったことを理解するだろう。本書で紹介されるさまざまな議論は、かれらが現代人より知的・技術的に劣ったヒト属でなかったが、微妙な一点で違っていたことを示唆して刺激的である。(ふじの・くにお 翻訳家)
内容説明
ネアンデルタール人の“文化”と“運命”とは、どのようなものだったのか?世界屈指の古人類学者が、関連諸科学の成果もあざやかに織り込みつつ描く、人類の起源と未来をめぐる刺激にみちた物語。
目次
第1部 過去の影(孤独なある種;人類のパラドックス;ネアンデルタール人)
第2部 氷河時代の生活(にぎやかな森;トナカイがやってくる!;大絶滅)
第3部 歴史の語り手たち(毒いりの贈り物;火の子どもたち;そして世界は透明になった;家畜化された人間)
著者等紹介
アルスアガ,フアン・ルイス[アルスアガ,フアンルイス][Arsuaga,Juan Luis]
1954年マドリードに生まれる。世界屈指の古人類学者。マドリード大学(ネアンデルタール人研究の一翼を担っている)古人類学教授、ロンドン大学客員教授。発掘副責任者を務めるスペイン・アタプエルカ山地の考古遺跡(世界遺産)におけるホモ・アンテセソールに関する発見と研究は人類進化の歴史を書き換え、1997年にはその功績にたいし「スペイン皇太子賞」(Premio Pr´incipe de Asturias)を授与された。2002年よりアメリカ科学アカデミー会員
藤野邦夫[フジノクニオ]
1935年石川県に生まれる。早稲田大学フランス文学科卒業。同大学院中退。東京大学講師、女子栄養大学講師などを務める
岩城正夫[イワキマサオ]
1930年東京都に生まれる。大学卒業後、中学教師、雑誌編集者、学会事務局員、高校教師などを経て大学教師に。2001年和光大学名誉教授。古代発火法検定協会理事長。2008年、「手作りとお喋り(セルフメイド友の会)」を若い仲間たちと立ち上げる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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