出版社内容情報
日本と中国の30のケースを追いかけ、人びとが「誇り」を抱き、「希望」と「勇気」を胸に一歩踏み出していることを痛切する。フロンティアに生きる人びとの「思い」を受けとめ、地域の未来を探求し続ける経済学者のライフワーク!
地域産業問題を専門にしている私は、この20~30年、日本とアジアの灼熱の「先端」か、あるいは「最後尾」と思える地域を訪ね歩いてきた。「先端」は次の時代を指し示し、「最後尾」は問題の構造を赤裸々に見せつけてくれる。それら両極を体で感じ、さらに他の情報を加えながら、私たちの「未来」を立体的に組み立てることばかり考えていた。
この20年の中国の「現場」は実に刺激的なものであり、多くの「発見」をさせてくれた。また、国内の条件不利地域の「現場」でも意外な「場面」に出会うことが少なくなかった。いずれの地域でも人びとは必死の「思い」で「未来」に向かっているように見えた。
地域産業振興を論じる世界では、他地域から収入を得られる産業振興が念頭にあり、「企業誘致」「起業」などが深く意識されてきた。だが、条件不利地域に暮らす人びととの交流を深めていくに従い、もう一つ「第三の道」があることを痛感させられる。それは「誇り」「希望」「勇気」といった言葉で語られる世界なのかもしれない。それは中国でも、日本の条件不利地域でも同様に見えた。
もちろん、「企業誘致」「起業」といった道を無視するわけにはいかない。この第一、第二の道と共存、調和できる第三の豊かな大人の地域を作っていくことが、私たちに求められている。
そして、このようなフロンティアを巡り歩いていると、「人材」の重要性を改めて痛感させられることになる。人びとに「誇り」「希望」「勇気」を抱いてもらうことが何よりも必要であろう。
以上のような視点に立って、本書は日本と中国の30のケースを追いかけていく。人びとが「誇り」を抱き、「希望」と「勇気」を胸に一歩踏み出していることが何よりなのであろう。
なお、本書はNHKラジオ第一放送の『ビジネス展望』で語ったものをベースとしている。四週に一度、早朝の6時43分から10分の生番組だが、常に新しい「現場」を伝えることに気を配っている。わずか10分ゆえに、十分に伝えられないことが多いが、これを突破口に皆様が独自に「現場」に踏み込み、新たな世界を切り開かれていくことを期待したい。(せき・みつひろ)
内容説明
いま成熟化、少子高齢化の中で、人の姿の見える「地域」の重要性が高まり、各地で新たな興味深い取り組みが重ねられている。それは地域産業振興の「第三の道」と言えるものかもしれない。
目次
1 日本の地方の片隅で何が起きているか(島根県旧吉田村―山村の「地域ブランド」への挑戦;栃木県茂木町―集落単位の取り組みによる地域おこし;岡山県新庄村―辺境の「村」のコミュニティビジネス ほか)
2 中国の片隅で何が起きているのか(北京市―シリコンバレーのソフト産業;瀋陽市―東北大学と東軟集団;温州市―民営中小企業の現在 ほか)
3 日本も中国も「人材育成」の時代(島根県海士町―隠岐島の中学生が一橋大学で講義;山形県長井市―工業高校は地域の「宝」;島根県松江市―高専の「地域産業論」の開講 ほか)
著者等紹介
関満博[セキミツヒロ]
1948年富山県生まれ。1976年成城大学大学院経済学研究科博士課程修了。現在、一橋大学大学院商学研究科教授。経済学博士。受賞:1984年第9回中小企業研究奨励賞特賞、1994年第34回エコノミスト賞、1997年第19回サントリー学芸賞、1998年第14回大平正芳記念賞特別賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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