出版社内容情報
日本にも政府・軍隊(自衛隊)と「協働」して人道復興支援にあたるNGOが登場して数年が経つ。本書の執筆者ら多くのNGO関係者はこれに危機感を抱いている。NGOとは国家から自立し、国家に物申し、グローバルな正義・公正の実現をめざす存在ではなかったのかという思いがあるからだ。
しかし、対テロ戦争に反対し、格差社会を拡大させる一方のグローバル化に異議を唱える社会運動を担う人々からは、NGOは政府の下請け・補完機関と化し、現状維持に加担しているという批判が確かに聞こえてくる。NGOがこうした批判を正面から受け止め、自己点検をする時期に来ていると本書の執筆者は考えている。
巷にNGO活動の宣伝や組織マネジメント論の本は溢れているが、本書がそれらと異なるのは、国際協力や人権分野でNGO活動に携わってきた者が、NGOは社会変革の担い手たりうるのか、担い手たりうるためには何が必要かを自らに問いかける書だという点だ。NGOがもてはやされ、社会に定着してきたこの二〇年ほどの間に、NGOは何を達成し、何を失ったのか。それをいま、そしてこれからNGOに関わろうとする人々に伝えることがいまほど重要なときはないと私たちは考えている。とくに最近注目を集める「パートナーシップ」と「政策提言」活動の分析を通じて、NGOが「政府にとって都合の良い存在」をどう越えられるかを掘り下げると同時に、社会変革を志向するNGOの組織はどうあるべきかについての問題提起を行っている。
社会を変えうるNGOの可能性(あるいは「限界」)をめぐる議論が、本書を契機にNGO自身の間で、社会を変えようと行動する人々の間で、さらに広がることを願っている。(編者代表 ふじおか・みえこ)
内容説明
NGO経験者がNGOの根本問題に挑む。危機にあるNGO。それは市民社会の危機だ!社会運動を「楽しい」「解放感のあるもの」にするための備忘録。
目次
なぜ国家か、なぜ社会変革か―NGOの可能性と「限界」
第1部 NGOの危機―変革主体としてのNGOを考える(NGOと社会運動;国際協力NGOによる社会変革は可能か?;NGOはODAをどう変えようとしていたのか;NGOの自律性と正統性―政策提言(アドボカシー)活動と「統治(ガバナンス)」
NGOと国家―文献批評から)
第2部 NGOの未来―グローバル化の中のNGOを考える(国際NGOの未来―変わりゆく世界秩序と新たな試練;開発NGOにおける「パートナーシップ」の検証;国際人権保障と人権NGO―「普遍的人権」を問い直す;人間安全保障・植民地主義・NGO)
著者等紹介
藤岡美恵子[フジオカミエコ]
反差別国際運動(IMADR)事務局次長を経て、現在、グァテマラのマヤ先住民族のコミュニティ・プロジェクトに携わりながら法政大学・同大学院で非常勤講師(国際協力論・国際人権論)を務める
越田清和[コシダキヨカズ]
1955年生まれ。アジア太平洋資料センター(PARC)で10年働き、東ティモールでの緊急救援・復興支援に関わる。現在、さっぽろ自由学校「遊」理事、ほっかいどうピースネット事務局に所属。札幌で非常勤講師(国際協力論・NGO論)をしながら反戦平和運動などに取り組む
中野憲志[ナカノケンジ]
先住民族問題・第四世界研究。グァテマラのマヤ先住民族のコミュニティ・プロジェクトに携わる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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